<プーチンよりも過激な主張する人たちが国内メディアに増殖し、制御できなくなりつつある。民間人を狙ったミサイル・ドローン攻撃という暴挙に走ったプーチンの立場と厳しい国内事情とは?:ラビ・アグラワル>
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ロシアの対ウクライナ戦争は新たな局面を迎えたようだ。戦場ではロシアの苦戦が続き、一方的に「併合」を宣言した東部や南部では占領地の一部を奪い返されているし、ロシア本土とクリミア半島をつなぐ大橋も爆破された。ロシアにとっては屈辱的な展開だ。

それで大統領のウラジーミル・プーチンは報復を命じ、ウクライナの都市部、それも住宅地や発電所などにミサイルを撃ち込んだ。首都キーウ(キエフ)には朝の通勤時間帯にイラン製の自爆ドローン多数が飛来し、複数の民間人を殺傷した。

いったいプーチンは、この攻撃拡大で何を目指しているのか。次なる展開は何なのか。

こうした疑問について、かつてCIAでロシア・ユーラシア担当の上級アナリストを務め、国家情報会議(NIC)にも在籍したアンドレア・ケンドールテイラー(新アメリカ安全保障センター上級研究員)に、フォーリン・ポリシー誌編集長のラビ・アグラワルが聞いた。

——まずは最近の都市部への空爆について。プーチンは何を考えているのか。

10月10日に始まった都市部への空爆はクリミア大橋爆破への報復だ。ロシア軍、とりわけプーチンがこういう方法を選んだのは、ひとえに戦場では劣勢で、報復どころではないからだ。

また民間施設を標的にしたのは、ロシア国内で強硬派の声が大きくなっている証拠だ。都市部の住民を恐怖のどん底に突き落とせば、ウクライナ政府もいずれ折れる、それが勝利の方程式だと、彼らは一貫して主張している。

あんな猛攻を長く続けられるとは思えないし、プーチン自身も空爆は終わりだと言っている。その代わり、彼らは安上がりな自爆ドローンを大量に飛ばしてキーウを攻撃した。

しかも、標的にしたのは社会インフラ、特に暖房や電力関連の施設だ。冬場に向けてウクライナ市民を困らせ、寒い思いをさせ、苦しめる。そうすれば勝てると、プーチンも考え始めた。

——こうした攻撃について、一般のロシア国民はどれくらい知っているのか。

かなりよく知っていると思う。ここ数日のロシア国営メディアでは、一連の攻撃が大々的に報じられている。

今のプーチンは、この戦争の位置付けをひっくり返そうとしている。ウクライナ東南部の領土を一方的かつ不法に併合して以来、彼は国民に対し、これはロシア防衛の戦いだと言っている。

とにかく国民に、この戦争を支持させたい。ロシアは被害者だと思わせたい。だから国内向けには、真の敵はウクライナではなくアメリカだ、西側陣営だと吹聴している。そして国家存亡の危機だと訴えている。

注意したいのは、ロシアには以前から、こうした攻撃を求めてきた強硬派が一定数いるということだ。彼らは今回のような攻撃を見ても、私たちと違って、驚かない。