もともと、保険証との一体化や免許証との統合は政府の「骨太の方針」でも示されていた。河野氏の方針に批判が集まっているのは、現行の保険証を24年度以降に「原則廃止」するとされていたものを、一歩踏み込んで、「24年秋に廃止」と期限を明示したからだ。従来の健康保険証が無くなれば、病院での診察時には保険証を兼ねるマイナンバーカードが必須になるわけで、カード取得が「実質義務化」されることになるわけだ。

遅々として普及が進まなかった政府からすれば、「起死回生の一打」といった強硬策だが、当然、反発も強い。

現行のマイナンバー法ではカードの発行について「申請に基づき個人番号カード(マイナンバーカード)を発行する」と定めており、取得を強制するには法改正が必要になる。そもそもマイナンバーで国民を管理すること自体に長年反対している人たちもいる。マイナンバー制度の導入時はカード保有は任意だったものを、実質義務化するのは「話が違う」ということになるわけだ。

政府の足元でも反対論が吹き上がった。公務員などの組合が傘下にある全国労働組合総連合(全労連)がさっそく反対声明を出し、2週間余りで10万筆を超す反対署名を集めた。日本弁護士連合会も強制に反対する会長声明を出している。国民のさまざまな情報を国が一元的に管理することになりかねないマイナンバーカードに、人権擁護の観点でも懸念があるというわけだ。

日本医師会会長「2年後の廃止が可能かどうか…」

では、仮に、強制されなくとも使いたくなるくらい「マイナ保険証」は便利なのだろうか。

すでに健康保険証とマイナンバーカードをひも付けるサービスは始まっている。ひも付ければ、マイナンバーカードを保険証として利用することもできる。厚労省のホームページには「便利に!」なるとして「顔認証で自動化された受付」「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」「窓口での限度額以上の医療費の一時支払いが不要」と書かれている。

いずれも、それが「便利!」と思うことだろうか。しかも、マイナンバーカードの読み取り機が設置されてシステム対応できる医療機関はまだまだ限られていて、どこでも使えるわけではない。

万が一に備えて健康保険証を財布の中に入れている人も多いが、現状ではマイナンバーカード1枚にはできず健康保険証も持ち歩くことになりそうだ。「薬の情報をマイナポータルで閲覧できる」と言った便利さも書かれているが、マイナンバーカード用のサイトである「マイナポータル」を恒常的に利用している人はまだまだ多くない。

「2年後の廃止が可能かどうか、非常に懸念がある」。日本医師会の松本吉郎会長は10月19日の記者会見でこう述べた。マイナ保険証については「特別反対していない」としたものの、マイナンバーカードがあまり普及していない現状では廃止は難しいとしたのだ。