リッチ感のオーラがないのが「シン富裕層」の特徴
高級車、高級時計、オーダーメイドのスーツ……少し前なら一点豪華主義であっても見分けがつくようなわかりやすい記号を持っていたかもしれません。しかし「シン富裕層」はたとえがいいかどうかはわかりませんが、エリートビジネスマンどころかそのへんにいる学生のようでもあり、街中ですれ違ったとしても「リッチ感」のオーラはゼロと言っていいでしょう。
後ほど詳しく述べますが、見た目と同様に暮らしぶりが派手なタイプもあまり多くありませんので、はっきり申し上げて、昔ながらの「金持ち」イメージではまったく見分けられない、というのが「シン富裕層」の共通点ともいえます。
数億から数十億円の資産を持つ大金持ちとは思えない、ラフな格好と口調で、ふわっとした相談をして、人生において重要な判断だと思われる海外移住先をすぐに決め、実際に移住していくのです。
このような「シン富裕層」の人々の収入源、考え方、行動様式について、本稿ではひも解いていきます。これまでの富裕層のイメージをがらりと変える、「シン富裕層」の実態をのぞき見てみましょう。
資産額10億~20億円くらいが「シン富裕層」の定義
富裕層の定義はさまざまありますが、よくメディアで取り上げられるのが、野村総合研究所の定義です。
世帯の純金融資産保有額(預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた額)が、5億円以上の場合を「超富裕層」と呼び、2019年時点での日本の超富裕層は、全世帯のわずか0.16%しかいません。そして1億円以上5億円未満が「富裕層」で2.3%、5000万円以上1億円未満が「準富裕層」で6.3%、3000万円以上5000万円未満が「アッパーマス層」で13.2%、3000万円未満が「マス層」で78%、というデータでした。
ただしこの定義は、金額に換算しやすい、わかりやすい資産のみを対象としています。私が見てきた「シン富裕層」たちの資産を捉える指標としては、不十分だと感じます。
なぜならここでは、不動産や中小企業の経営者の持つ未公開の自社株など、換金しにくい資産が、資産として含まれていないからです。さらに今人気の暗号資産やFXなどの時価総額、できれば動画配信の登録者数やTwitterのフォロワー数も今の時代なら資産として考慮に入れるべきでしょう。
それらを含んだ資産額で考えると、「シン富裕層」のボリュームゾーンは、10億円から20億円くらいを持っている人たちだと感じています。
上場企業のオーナー社長であれば、100億円以上の資産を持つ人も普通にいます。持ち株を売却しにくいことと家族への資産継承を考慮して、「ファミリーオフィス」を設立し、資産管理をしている人もいます。