無断アップデートは損害賠償の対象になる

Q 他人が写り込んだ動画を無断でアップロードしていると思われる例をよく見かけます。肖像権を侵害すると、どのような法的責任が生じるのでしょうか?

A 法律上の規定が存在しないので、刑事上の責任を負うことはなく、逮捕されたり、懲役刑になったりすることはありません。しかし、肖像権を侵害する行為は不法行為と考えられるので、民法第709条の不法行為による損害賠償の義務を負う、つまり、損害賠償金を支払わねばならなくなる可能性があります。

また、肖像権侵害を理由に差し止め請求を受ける可能性があり、その場合には、他者の肖像権を侵害する写真や動画を公表することができなくなります。動画の削除を請求される可能性もあります。

民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

写り込んだ通行人にはモザイク処理が無難

Q どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

A すでに説明したように、ロケ動画を撮影する際には、通行人などが写り込まないように配慮することが必要です。また、街頭インタビューなどを行なう場合には、被撮影者に動画の趣旨や企画内容などを説明し、撮影と公開の両方に関して、被撮影者の承諾が得られない場合には、動画の公開はしないようにしましょう。

実際には、ロケ動画の撮影では、肖像権侵害が成立しないという場合も考えられます。しかし、無用なトラブルを避けるという意味で、通行人が写り込んでいる場合にはモザイク処理をしておくことが賢明と言えます。

写真=iStock.com/Mindaugas Dulinskas
※写真はイメージです

視聴者が多いYouTuberの場合、いわゆるアンチと呼ばれる敵対的な視聴者もいます。そのような視聴者が、肖像権についての十分な知識を持つことなく、YouTuberが投稿した動画について、「肖像権を侵害している」と主張することも考えられます。

通行人が写らないような場所でロケ動画を撮影するといった工夫をするとよいと思います。念のため、人の顔が少しでも写り込んでいる場合には、モザイク処理を行なうという対応が無難です。

まとめ
・ロケ動画では通行人の写り込みに気をつける。
・少しでも人の顔が写った場合はモザイク処理をしよう。