丁寧に言葉を選びながらも強いリーダーシップをすでに発揮しはじめている。

「赤字は罪悪です。赤字で、一円も税金を払わず、税金でつくった道路を使っていいわけがない。

私は『君は能力がないから辞めてもらいます』なんて言ったことは一回もない。『君は怠けているから辞めてもらう。怠け者だ、君は。働く意欲を持たない』、そんな人は組合がなんと言えどもクビです。良貨が悪貨を駆逐するのがいい会社。『私はこれだけ頑張っているのだから。おまえも頑張ってくれ』と言わなければならないのに、『どうして、おまえだけ働くんや。いい加減にしておけよ』と言うのはおかしい。

再建完了するまで一円もここから給料はもらいません。完了したら少しくださいよ(笑)。それまでは私は水も自分で持ってきます。トイレだけ貸してください。それからずっと居座りませんから。再建が終わったら帰ります」

見る見るうちに従業員の顔色が真剣な眼差しに変わるのがわかる。再建をすること、黒字になること、そのために懸命に働くことが正しい道であることを、独特の言い回しで繰り返す永守さん。

「今からいろんなこと言うけども、まずは従ってほしい。結果は必ず出る。結果が出ないときには責任は全部、私にあります」

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=奥谷 仁、芳地博之)