孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の世帯年収

わずかな差ではあるが、正社員(9%)のほうが契約社員(7%)や自営業主(6%)よりも孤独を感じている人の割合が多いのも興味深い。

「日本のコミュニティー構造は『村社会』にさかのぼるわけですが、その延長上にあったのが『職場』というコミュニティーでした。会社は福利厚生を充実させて、独身のときは独身寮、結婚したら社宅、みたいな、もう至れり尽くせりだったわけです。職場結婚も多かった。ところが最近、その構造が少し崩壊してきた。会社から離れると、実は友だちなんていなかったことに気づく人が多い」

「友だちをつくろう」の残酷

そこで大切なのは「寂しいから友だちをつくらなければいけないとか、趣味を持たなければいけないという、世の中に流布されている『孤独は悪』論者の言葉を鵜呑みにしないことです」と、荒川さんは力説する。

「友だちなんてつくろうと思ってできるものではありません。友だちはいつの間にかできているものだし、趣味も、いつの間にかハマっているものでしょう。大事なのは友だちの数ではないはずです」

荒川さんは毎日接する人との接点の一つひとつ、一人ひとりを大事にしてほしいと訴える。

「行きつけの居酒屋でもいいんです。もっと言えば、毎日訪れるコンビニでもいい。そこで働いている人と一言二言、言葉を交わすだけでそこがそれぞれの『接続するコミュニティー』になっていく」

筆者が面白いと思ったのは、街で道を聞いたり、聞かれたりすることも人との接点であり、一つのコミュニティーだという考えだ。

「一期一会かもしれませんが、そんな小さな人との接続そのものを大切に思う心が重要なんです。友だちがいるとか、いないとかじゃなくて、自分の行動によって自分自身を充実させることができるんだ、ということにいかに気づけるかが大切です」

寿命は結果でしかない

荒川さんは自分と向き合うことの大切さを繰り返し説く。

「日々の生活のなかでは収入や貯蓄に目が向きがちですが、自分がどういう人間、性格なのか、自分を知ることはとても大切です」

そういう意味では、年金の受給に関わる死亡年齢の中央値について思いを巡らせることも、自分と向き合うきっかけになるかもしれないと語る。

「統計はあくまで統計で、すべての人に当てはまるものではありませんが、残された時間を知るからこそ今を大切にしようとも思えます。長生きは結果であって、目的ではない。老後の年金の心配をすることも重要ですが、ずっと先の未来のリスクばかり考えて、今をないがしろにしては本末転倒です。それより、日常の中にあるちょっとした喜びとの接続を大切に、今をどう充実させるかに注力したほうがいい。日々楽しく行動する人が結果的に長生きしたりしているんじゃないでしょうか」

将来の不安に悩む人は少なくない。荒川さんの言葉に救われる人は多いだろう。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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