孤独が寿命に与える影響についての研究は海外が先行してきた。そこで意識しておきたいのは、同じ「孤独」を意味する「loneliness」と「solitude」の二つの単語だ。

「loneliness」は、自らの意思に反して疎外感や孤独感を覚えることを意味する。孤独研究などで使われるのは、この意味合いだ。一方、「solitude」は一人で思索を巡らせ、自由でポジティブな印象の含みをもたせる。ところが、日本語では両方とも「孤独」と訳され、混同されてきた経緯がある。

「しかし、そもそも孤独というものは本人が望む望まないにかかわらず、普遍的にあるものです。それに対して、孤独を感じることが即、悪だ、病なんだ、みたいな決めつけは本当に有害でしかない。孤独というのは『空気』のようなもので、人間が生きていくうえでとても重要なものです。そこを間違えてはいけない」

孤独の多くは収入の問題

さらに、「孤独は悪」という頭ごなしの主張は問題の本質を覆い隠してしまい、対策を誤らせてしまう危険性があると、荒川さんは指摘する。

昨年12月、国は初めて「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」を行った。

孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の54%が男性、女性は46%。そのうち88%が心身の健康状態について「よくない」「あまりよくない」と答えた。

孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の婚姻状況

既婚はわずか10%なのに対して、未婚41%、離別35%、死別14%。「孤立・孤独」と「配偶関係」との間に強い相関があると推察される。

仕事については「仕事なし(失業中、23%)」「派遣社員(16%)」の割合が特に多い。さらに収入が低い人ほど孤立感や孤独感を覚えていることを調査は明らかにした。

「要するに、孤独に苦しむ独身おじさんの寿命が短い問題は、結局、収入の問題だったりするわけですよ。『お金がない』という状況は本当に人の心と行動を萎縮させてしまう。健康状態に気をつかう余裕さえ失わせてしまう。そこに目を向けなければならないのに、『孤独は悪』と叫んでいても何の問題解決にもならない」