「わかっているつもり」には要注意

わかっているつもりの会話で問題が起きやすいのが親しい関係です。付き合いが長くなればなるほど、相手のことを知っていると思い込んでしまいます。最後まで話さなくてもわかるからと会話をさえぎることもあります。

あなたは、あなたの大切な人(恋人や子どもなど)の好きなことと嫌いなこと、したいこととしたくないことを100%言い当てられますか? 難しいと思います。私も自分の子どものことを100%理解するのは無理です。

聞き手は、相手のことを100%理解できないことがわかった上で聞くのが大前提。わざわざ「わかる」という言葉を使ってリスクを冒す必要はないでしょう。

会話に上下関係はいらない

安心して話してもらうためにカウンセラーが意識しているのが、「ラーニング」です。ティーチングでも、コーチングでもなく、ラーニング。上手な聞き手は、どんな相手でも「教えてもらう」というスタンスを忘れません。

どうして、ついアドバイスしたくなるのか?
解決方法を聞かれてもいないのに、教えたくなるのか?
自分の意見と異なると正したくなるのか?
気になることがあると、あれこれ確認したくなるのか?

それは、相手との関係性から生まれる心理です。

会話する相手との関係を上下でとらえると、上手な聞き方ができなくなります。

例えば、相談されると、相談してきた人(悩んでいる人)が下で、相談を受けているほうが上だと思ってしまいます。カウンセラーとして仕事を始めたばかりの頃の私も、そうだったかもしれません。そういう心理が働くと、相手に対して上から目線になります。

本人に「上から」という意識はなくても、相手のためにと思っていたとしても、「教えてあげる」「解決してあげる」というスタンス。要するに、ティーチングやコーチングです。

相談ごとや悩みごとでなくても、上下の関係を意識すると、ラーニングではなくティーチングやコーチングのスタンスになります。

上司と部下、先輩と後輩、親と子、年上と年下、先生と生徒……。こうした関係は、誰が決めたわけではありませんが、世の中ではヨコの関係ではなく、タテの関係になります。

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「教えてくれる?」「教えてくれてありがとう」と言えるか

タテの関係での会話は、どうしても上の人のほうが話し手になりがちです。

例えば上司と部下の会話の場合、「今日は君の話をたくさん聞かせてよ」と上司が言ったところで、部下が聞き手に回ることが多くなります。部下の話の中に気になる箇所があったりすると、それこそ上司が一方的に話すことになります。