※本稿は、山根洋士『なぜ、あの人には何でも話してしまうのか 心理カウンセラーのスゴイ「聞く技術」』(アスコム)の一部を再編集したものです。
好かれる人は「聞き上手」である
話の聞き方の本質は、「どう話すか」ではなく「どう話してもらうか」です。
会話を盛り上げるのが得意ではなかったり、話術に自信がなかったりしても大丈夫。面白い話のネタがあるとか、冗談がうまいとか、気の利いた返しができるといったことは、それほど重要ではありません。
豊富な知識や経験、うんちくは聞き手にとってかえって邪魔なくらいです。
上手な聞き手になるには、聞く技術が必要です。その技術を持ち合わせているのが、どんな相談者のどんな内容の話でも聞き続けられるカウンセラーです。この本の聞く技術を整理すると、次の3つになります。
①安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方(受容・共感)
②本音を話してもらう聞き方(自己一致)
③聞き疲れしない方法
最初に、「安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方」から始めましょう。
会話において、話し手と聞き手の距離感はとても大切です。距離とは、心の距離。相手が心を開いてくれるところまで近寄らないと話してもらえないし、相手の心に踏み込み過ぎると、逆に心を閉ざして話してもらえなくなります。
上手な聞き手になろうとすると、相手のことをもっと理解したいと近づきたくなりますが、上手な聞き手は、近づき過ぎず、離れ過ぎない、ほどよい距離感を保つことを心がけています。
「わかる~」は何もわかってない
「どうしたんですか? 元気ないですね」
「ええ、ペットが病気になっちゃって本当につらいんです。こんなに落ち込むとは思いませんでした」
「ああ、わかります、わかります」
「もしも元気にならなかったら……とか考えてしまって」
「わかりますよ。私も昔、飼っていたインコが……」
この会話、特におかしなところはないように思えます。でも、もしかすると、ちょっと嫌だなと感じた人もいるのではないでしょうか。
「わかるよ」というのは、相手に寄り添うつもりでつい言ってしまいがちな言葉です。しかし実は「わかる」は禁句。なぜなら、わかるわけがないからです。