長年の友達など親しい人が相手ならまだしも、信頼関係をつくる段階では特に危険。あっという間に心のシャッターを閉ざされるかもしれません。

相手は心の中で「そんな簡単にわかってほしくない」「私の何がわかるのか」と思ってしまうかもしれません。さらに「私も昔……」なんて自分の話を始めるのは最悪です。聞いていない人、自分の話をしたがる人、という印象を与えてしまいます。

受容と共感のためには、「そうなんですね」「つらいですね」などが無難です。相手の言っていることを、そのまま受け止めればいいのです。

写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

人にはそれぞれ「言葉マップ」がある

相手の話と似たような体験を自分もしたことがあると、「本当にわかる」と思うかもしれません。でもそれが、知識や経験の罠。正確には、自分なりに想像がつく、というレベルではないでしょうか。

ここで質問です。あなたは、「ペット」という言葉を聞いたら、どんなことが頭に浮かんできますか? 自分で飼っている犬や猫の姿でしょうか。それとも、ペットと遊んだ思い出? あるいは、ペットを題材にした映画や漫画が思いつくかもしれません。

このように、1つの言葉から連想されるイメージは、人それぞれです。

相手の頭に浮かんでいることと、自分の頭に浮かんでいることは異なります。どんなに親しい間柄でも、同じ環境で生活している人同士でも、完全に一致することはないでしょう。

年齢も性別も、生まれたところや育ったところも、好きなことや嫌いなこともすべて同じという人はいないのですから、そう考えるほうが自然です。あなたとまったく同じ人生を歩んできた人など、いませんよね。

私たちの頭の中には、生まれてからの経験をもとに、膨大な言葉と、それに連なるイメージが蓄積されています。それを「言葉マップ」といいます。そして会話のときは、相手の言葉を、その言葉マップからピックアップしてイメージしています。

つまり、相手の言葉を自分なりに翻訳して理解しているということです。それなのに、次のような合いの手を安易に使ってしまいます。

「あなたの気持ちはよくわかります」
「言いたいことはわかります」

私たちは、さも相手のことを理解しているといった言葉を返すことがありますが、間違って解釈している可能性は十分にあります。言葉マップがそれぞれ異なるのに、相手が話していることを100%理解できていると思っているのが、そもそも間違いなのです。