「いつでもできる」ことは徹底的に前倒しして実行する

では、この考え方を我々の生活に取り入れるにはどうすれば良いか。一言で言えば「手前の結果には、より価値がある」と意識する、ということになります。

例えば30歳になってから初めて海外旅行を経験し、語学力の必要性を痛感した場合と、同じことを20歳で経験した場合を考えてみましょう。

30歳からであっても決して遅くはありませんが、後者であれば10年早くスタートを切ることができ、キャリアや人生の幅は大きく違ってきます。

また、会社から持たされている年度の予算を第3四半期に達成した場合と、年度末ギリギリになって達成した場合を考えてみましょう。どちらもその年度の実績としては同額ですが、前者であれば残りの3カ月間を次の年度の成績に向けた仕込みに使うことができます。

こうして書いてみると至極当たり前のような気がしてきますが、実際には多くの人が手前の経験・成果の価値を見誤り、大きな機会損失を被っています。

よく見るケースでいうと、節約のために飲み会を欠席し、毎食弁当を持って来る人(手前での新たな人的ネットワークの獲得や、同僚・お客さんとのコミュニケーション機会を失い、数年後に使うための資金を貯めこんでいる)や、飛び級での昇進の話や高待遇での転職オファーを、まだ自信がないからという曖昧な理由で断る人(数年早く、新たな職責で得られるノウハウがあることを見過ごしている)などが挙げられます。

「いつでもできる」ことは徹底的に前倒しして実行することが、IRRの高い、投資思考に沿った生き方だと言えるでしょう。

期限に向かって仕事をする習慣を卒業しよう

巷のビジネス書やインフルエンサーの発言によく見られるのが、「まず期限を決めて、それに向かって仕事をしよう」というものです。

これは一見合理的なように思えるのですが、これを実践していくと期限に合わせて仕事をする癖がついてしまいます。これはIRRを破壊するに等しい行為です。

一スタッフとして、指示されたことを遂行するだけの人材としてキャリアを終えるつもりならそれでもよいかもしれませんが、本書を手に取って頂いている方は視座の高い方々と想定しています。

野原秀介『投資思考』(実業之日本社)

もしあなたが今“期限に向かって仕事をする習慣”が染み付いてしまっているのであれば、今すぐにその習慣を卒業しましょう。

全ての仕事は本来今すぐに完了されるべきもので、期限とは「このラインを超えると周りに迷惑をかける・ビジネスに差し障りがある」ことを示すのだと頭を切り替えましょう。

そして基本的な仕事の進め方として、IRRを高めることをゴールに据え、仕事の回転数を高めるようにしましょう。

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