“お金の現在価値”を理解する
この考え方のベースになるのが“お金の現在価値”という概念です。
この概念を理解するために少しクイズを出します。
あなたは運良く宝くじに当選し、100万円を獲得できることが決まりました。ただしそれを受け取るタイミングについては決まっておらず、以下の3つの選択肢があります。さて、投資思考においてはどれを選ぶことが正しいでしょうか?
B 1年後に100万円をもらう
C AもBも変わらない
答えは“A 今すぐ100万円をもらう”になります。
これはなぜか考えてみましょう。
Aを選び100万円を受け取ったあなたは、すぐにその100万円を好きに使うことができ、もちろん投資することもできます。ということは上記の選択肢は以下のように書き換えることが可能です。
B 1年後に100万円をもらう
C AもBも変わらない
運用して損するかもしれないじゃないか! という意見も出そうなので補足します。
確かに運用方法によっては利益が出るものも、損失を出してしまうものもあり得ます。金融の世界にはそういった可能性を考慮した上で、「リスクゼロでこれくらいの利回りは出るよね」という利率が存在しており、“リスクフリーレート”と呼ばれています。
日本の場合には2016年12月以降、無担保コールオーバーナイト物金利(TONA、Tokyo OverNight Average rate/金融機関同士が「今日借りて、明日返す」、「今日貸して、明日返してもらう」など、超短期の資金調達や資金供給を、借り手が貸し手に対して担保を預けずに行う取引のこと)が採用されています。
今でこそ、0%付近を推移していますが、1990年代には年利8%を推移していたこともありました(図表3)。リスクゼロで8%の利回りが獲得できるのであれば、A 今すぐ100万円をもらう以外の選択は考えられませんね。
このように得られる効用(例で言えば100万円)は全く同じであっても、タイミングによって価値が変わってくるので、将来得られる効用も全て現在の価値に直して比較しましょうというのが金融の世界における考え方です。
これをDCF(Discounted Cash Flow)法といいます。様々な国から、様々な投資家が、様々な資産に対し投資検討をしているため、その際に共通の物差しとしてこのDCF法という考え方が用いられています。