100%のめり込めないなら「大差」で負ける
こういうことが苦手な人もいて、「どうしたらアイデアを簡潔に売り込めるようになりますか?」なんて聞かれることが多い。
私の答えはこうだ。今すでに得意でないのなら、夢中でないのなら、君には向いていないのかもしれない――君が本当にのめり込んでいるものに集中しよう。
私の本当の特殊知識を初めて指摘してくれたのは、母だった。母はキッチンから何の気なしに声をかけてきた。私が15、6歳のときだよ。
宇宙物理学者になりたいと友人に話しているのを聞いて、母はこう言ったんだ。「あら、あなたは実業の世界に入るのよ」。私は「何、実業だって? 僕は宇宙物理学者になるんだ。母さんは何もわかっちゃいない」なんて思っていた。
でも母にはちゃんとわかっていた[※1]。
特殊知識を見つけるには、君の生まれつきの才能や、純粋な好奇心、情熱を追い求めたほうがずっといい。今人気の仕事の養成所に行ったり、投資家の注目する分野に進んだりしても、特殊知識は見つからない。
たしかに、特殊知識は知識の最先端にあることが多い。今ようやく解明されつつある物事や、解明するのがとても難しい物事も、特殊知識になる。
でも、君がそれに100%のめり込んでいなければ、100%のめり込んでいる誰かに負ける。しかも、僅差で負けるのではなく、大差で負けてしまう。それはなぜかというと、アイデアの領域には複利が大きく働き、レバレッジが大きく働くからだ[※1]。
インターネットはキャリアの可能性をとてつもなく広げた。ほとんどの人はまだそのことに気づいていない。
ネットを利用すれば、君に興味を持ってくれるオーディエンスが必ず見つかる。ネットで君にしかないものをただ表現するだけで、事業を興し、プロダクトをつくり、富を築き、人々を幸せにすることができるんだ[※1]。
ネットのおかげで、君はどんなニッチな分野でもビジネスにすることができる――それを一番うまくスケールできるのが君である限り。そしてすばらしいことに、人は一人ひとり違うから、どんな人も得意なことを必ず持っている――それは、自分らしくあることだ。
もう1つ、「リッチになる方法」の連投ツイートに含める価値があったが入っていない、とてもシンプルなツイートがある――「自分らしさで競争から抜け出せ」。
君が人と競争しているときは、要するに人を模倣している。人と同じことをしているんだ。でも人はみな違う。模倣してはいけない[※1]。
君が君らしさの延長線上にある何かをつくって売れば、誰も君に太刀打ちできない。漫画家のジョー・ローガンやスコット・アダムスと張り合おうなんて人がいるだろうか? そんなの無理だろう。
コミック『ディルバート』をスコット・アダムスよりうまく描く人が現れるだろうか? いいや。ビル・ワターソンよりもうまく『カルビン&ホッブス』を描く人が出てくるだろうか? いいや。彼らは自分らしさで勝負している[※1]。
「基礎」から始めて、深く精通する
最高の仕事は、運命とも学位とも関係ない。最高の仕事とは、学びつづける者たちによる、自由市場でのクリエイティブな表現である。
リッチになるための最重要スキルは、いつまでも学びつづける能力だ。学びたいことを何でも学べる力を身につけなくてはならない。
昔は金儲けの方法といえば、大学に4年通い、学位を取って、専門職として30年働くことだった。でも今は変化が激しい時代だ。今は新しい技能を9カ月ですばやくマスターすることが求められ、その技能は4年も経てば陳腐化してしまう。
だがその生産的な3年間に、君は莫大な富を獲得できるんだ。
今はるかに重要なのは、ずっと前に「正しい」ことを学んだかどうかよりも、9カ月や12カ月で最新分野のエキスパートになれるかどうかだ。
どんな本にも怖じ気づかないように、基礎をしっかり学んでおこう。図書館に行って理解できない本があったら、「これを学ぶのに必要な基礎知識は何か?」と掘り下げて考えよう。基礎がとにかく大切だ[※5]。
人生には微分積分より、基本の算数と計算力のほうがよほど重要だ。また、詩を書く能力や豊富な語彙や7カ国語を操る力より、普通の言葉を使って自分の考えを伝える能力のほうがよほど重要だ。
デジタルマーケティングやクリック最適化にくわしくなるより、言葉で人を動かせるほうがよほど重要だ。基礎がカギなんだ。何かを深く深く掘り下げるよりも、基本を9割か10割おさえておくほうがずっといい。
と言っても、何かに深く精通することは必要だ。広く浅くでは、人生で叶えたいことは叶えられないからね。君が極められるのは、1つか2つのことだけだ。そしてそれはたいてい、君がのめり込んでいることだ[※5]。
(出典)
※1 Ravicant, Naval. “How to Get Rich: Every Episode.” Naval, June 3, 2009.
※2 PowerfulJRE. “Joe Rogan Experience #1309—Naval Ravikant.” 2:11:56.
※3 Ravikant, Naval. Twitter, Twitter.com/Naval.
※4 “Naval Ravikant was live.” Periscope, April 29, 2018.
※5 @Naval. “Naval Ravikant was live.” Periscope, February 2019.