自分で原因がわからないことの苦しさ
じつは、10~20代の若者の自殺原因を調べると、3人に1人は「不詳」。つまり、理由がわからないのです。
なぜこれほど「不詳」が多いのかは、関係者の間でも長年の疑問となっていました。
しかし「あなたのいばしょ」で多くの方の話を伺っているうちに、ひとつの答えが見えてきました。
相談者のなかには、いじめられているわけでもなく、友達とケンカしているわけでもない。先生や親との関係が悪いわけでもない。でも、死にたいという人たちが少なからずいます。
深い悩みや生きづらさを抱えている本人自身も、その理由がわかっていない場合が多いのです。死んだほうがマシだと思うくらい毎日がしんどいのに、その原因が自分でもわからないのはとても苦しいものです。
話すことで整理できる
心のモヤモヤや言葉にはできない違和感を1人で抱え込んでいると、それらがどんどん積み重なっていきます。そのままにしていたら心のなかがぐちゃぐちゃになって、最終的には、死にたいほどつらくなるということがあるのです。
そこまでいくと、自分がどういう気持ちで、何に苦しんでいるのかもわからない。何が正解かもわからないという状況になってしまいます。僕がF先生にメールを送ったときも、まさにその状況でした。
そのような状態のまま1人でいると、ますます迷宮に入ってしまいます。しかし誰かと話すことで、自分の気持ちを整理でき、視野が広がることもあるのです。
「あなたのいばしょ」でも、初めは「理由はわからないが苦しい」という方たちが、最終的には、「そうか、私がつらかった理由はこれだったのですね」「もんもんとした気持ちの原因がわかりました」と変化することがよくあります。
それは、混乱していた感情や積もり積もった思いを文字にして伝えていくうちに、心のなかが整理できるからです。
人の悩みというものは、いくつもの問題が複雑に絡み合っている場合も多くあります。しかし話をしていくうちに、次第に心の整理ができ、自分自身で解決の糸口を見つけられることもあるのです。
だから「ちょっとしんどいな」と思ったときは、迷わず誰かに話を聞いてもらおうと考えるようにしてください。友達に「元気?」と挨拶するのと同じような感覚で、「最近、ちょっとしんどくてさ」「なんだかモヤモヤするんだよね」と話すことが当たり前な世界になることを願っています。