メディアが伝えてこなかった大きなツケ

確かに2014年から2015年にかけて欧米メディアはこぞって日本会議のことを報じている。青木さんが2016年に出版した『日本会議の正体』によると、

「国粋主義的かつ歴史修正的な目標を掲げ、戦前の古き良き時代のように天皇を敬う」(英ガーディアン紙)、「日本会議〜日本版ティーパーティー〜のような反動的グループが安倍内閣を牛耳り、歴史観を共有している」(米CNNテレビ)など、極めて復古的、国粋主義的な団体の性格だけでなく、「奇妙なことに、この団体は日本のメディアの注目をほとんど集めていない」(ガーディアン紙)とも報じている。

海外メディアが相次いで報道し、青木さんの著書などが出版されてやっと、朝日、毎日なども「日本会議の研究」などと本格的な報道を始めている。

それでも、今回の安倍首相襲撃事件が起こるまで、多くの人たちに日本会議や旧統一教会など宗教右派の活動が知られることはなかった。今になって、「メディアはなぜもっと早く知らせてくれなかったのか」という声をよく聞く。

そこにはこれまで書いてきたようなメディア内部の構造上の問題やジェンダー関連報道の優先度の低さ、また「政治報道を担当する政治部が、支援団体である宗教まで踏み込んでこなかった」(青木さん)など、さまざまな要因が絡んでいたのだと思う。

青木さんは『日本会議の正体』のプロローグでこう書いている。

「足下で起きている出来事であっても、メディアが伝えようとしなければ、私たちは出来事を認識することすらできない。その出来事が驚愕すべきようなことであったり、きわめて異常なことであったり、あるいは早急な対処が必要なほど深刻な事態であっても、メディアがきちんと伝えてくれなければ、私たちは(中略)出来事自体の発生を認知できず、漫然と事態をやりすごすしかなくなってしまう」

さまざまな場面で当事者たちは小さな声を上げてきたが、メディアはそれを汲み取り、継続的には伝えてこなかった。そのため「やり過ごされてきた」問題が、今私たちの目の前に吹き出しているのである。

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