「お前、Mちゃんと付き合ってるのか?」

1997年に高校を卒業した桜木さんは、自営業の父親(当時49歳)の手伝いを始めた。5月ごろ、21歳になった桜木さんは、教団で2歳年下のMちゃんにこっそり告白。一度はフラれたものの、数週間後には交際に発展。しかしこの交際も、長くは続かなかった。

交際が始まって約3カ月後のこと。父親から「お前、Mちゃんと付き合ってるのか? 近く審理委員会があるからきちんと申し開きをするように」と言われたのだ。

桜木さんによれば、審理委員会とは裁判のようなもの。集会所に呼び出され、2人別々に聴取される。審理委員会ではまず、「神の前で真実を語ると誓いますか?」「私たち教団の結婚前のお付き合いの仕方や、不純な性行為を禁じていることを理解していますか?」と訊ねられ、「はい」と答える。

するとトップが、「ここに書かれていることは事実ですか?」と一冊のノートを出した。それは、Mちゃんとその親友が交換していた日記。どうやら、親友のお母さんが盗み見て長老に提出したのが、交際がバレた経緯だったようだ。

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桜木さんは「はい」と答え、「でも結婚を前提に真剣に付き合ってます」と続ける。

しかしここで必要なのは、「今までの行為を悔い改めるか改めないか」の選択だった。「悔い改めません」と言えば即排斥となる。

桜木さんによると、組織は排斥者とは一切の関わりを断つよう教えており、親きょうだいでも一切接触できなくなるという。結婚式に来てもらえない、生まれた子供をを両親に会わせられない、といった話はザラであり、家族であっても被災者が排斥者だった場合、信者たちは助けず、安否確認もできない。だから桜木さんは、徐々に組織との距離を置く「自然消滅」を狙っていた。

「今排斥されれば、『私たちが悪いから排除された』で終わる。でも、どうせ辞めるなら、『組織が悪い』ことを他の信者にも気付いてもらえるようにして辞めたい」

桜木さんはこう考え、「悔い改めます。今後は第三者のいる所でお付き合いします」と答えた。