制度をシンプル化して普及に成功した英国

報告書によると、NISAを認知しているか否かにかかわらず、制度の恒久化および、非課税期間の無期限化を求める回答も多い。言い換えれば、口座を開設し、コストを抑えて長期投資を行うベネフィットを具体的にイメージしづらい人が多いといえる。

そうした課題解決のために英国の取り組みは参考になる。1999年に英国はISA制度を開始した。当初、ISAの口座開設期間は10年と定められた。制度設計も分かりづらかった。当初は、株式、預金、保険それぞれの口座を異なる金融機関で開設できる“ミニISA”制度と、株式、預金、保険をひとまとめにして運用できる口座を一金融機関に一つ開設する“総合ISA”制度の二本立てだった。

英国民はISAのベネフィットをイメージしづらかっただろう。そのためISA開始当初の口座開設ペースは緩やかだった。その後、2008年にISA制度の恒久化と、ミニと総合型の区分が廃止され株式と預金の2つを対象にするISAへ制度がシンプル化されたことを契機に、英国でのISA口座は一段と増加した。

お金についての教育が充実していない

金融庁は、NISAの使い勝手を高めるべく、恒久化と、非課税となる期間を無期限にしようとしている。それは、個々人の資産形成にとって重要だ。ただし、それは使い勝手向上の必要条件ではあるが、十分条件ではない。

本来、個人の資金運用は3カ月や1年など、特定の期間における収益の多寡を問うものではない。各人のライフスタイルに合わせて時間と金額を分散し、長期の視点で無理をせずに資金を運用することが大切だ。個人の資金運用の目的は、老後など、万が一お金が必要になった時に備えることにある。

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つみたてNISAを軸に制度を一本化し、年間の投資可能金額の引き上げなども検討されるべきと考えられる。報告書によると、課税対象の投資用口座(特定口座など)との損益通算を認めてほしい等の要望も多い。

それに加え、わが国は個人の投資教育も強化すべきだ。長期的に、株価はGDP(国内総生産)で評価される経済成長率に連動する。景気が良くなれば、株価は上がる。景気が悪くなれば、株価は下がる。投資の鉄則は、価格が大きく下落した時に買うことだ。世界経済の成長率が大きく低下するなどして株価が大きく調整した時に、タイミングと金額を分散して低コストの上場投信(ETF)などを買うことができれば、あとは景気の回復を待てばよい。