過去30年間、成長を遂げてきたのが一転
9月15日夕、貨物大手フェデックスは6~8月期の決算速報を発表した。6~8月期にかけて貨物取扱数量は減少し、同社の一株利益は予想を下回った。先行きに関して経営陣は、世界全体でコストカットを強化する企業は増え、世界の貨物輸送需要がさらに減少するとの懸念を表明した。6月に公表された業績予想が撤回されるほど、事業環境の厳しさは増している。今回の発表で、翌16日のフェデックス株は前営業日から21.4%下落した。
フェデックスの業績悪化は、世界の景気後退と株価下落リスクの高まりの警鐘と考えられる。過去30年ほどの間、グローバル化やデジタル化の加速を背景に世界の物流は活発化し、フェデックスは成長を遂げた。
しかし、中国経済の急減速などによって、ここにきて同社の取扱貨物数量が急減している。それは、世界の生産活動や個人消費の鈍化を示唆している。今後、米国の連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)などは、インフレ鎮静化のため金融を本格的に引き締める可能性が高い。それによって世界的に景気は後退し、株価の下落圧力も高まる展開が懸念される。
ロックダウン解除後、貨物需要は増加すると思われたが…
航空貨物などの輸送需要は、世界経済の動向に大きく左右される。フェデックスの決算説明資料によると、6~8月期の業績悪化は主にアジアと欧州における貨物取扱数量の減少に影響された。アジア地域では中国の景気後退懸念が一段と高まっている。不動産バブルの崩壊、断続的なゼロコロナ政策などによって、中国の個人消費や生産活動の回復は鈍い。
当初、フェデックスは上海のロックダウンが解除され、経済活動が徐々に回復するに伴って中国国内、および中国から海外向けの貨物は増加すると予想した。しかし、同社が取り扱う中国の貨物はむしろ予想外に減少している。中国では本格的な景気後退を懸念する中小企業などが急速に増え、生産活動などが急速に弱まっているようだ。
欧州経済もかなり厳しい。ウクライナ危機が発生して以降、欧州各国はロシアからの天然ガスなどの供給減少に直面した。天然ガス価格の上昇によって、電力料金も高騰している。