日本経済への逆風は一段と強まる
昨年、米国では緩和的な金融環境の長期化期待もあり、株価が大きく上昇した。個人消費は大きく盛り上がった。それが年末商戦での売り上げ増加期待を高め、中国などからの輸入が急増した。今年は、それと逆の展開になる恐れが強まっている。中国やその他のアジア新興国から米国向けの航空貨物便などは減少し、フェデックスの業績には一段と強い下押し圧力がかかると予想される。
足許の世界経済において、米国経済は主要国の中で唯一、底堅さを維持しているといっても過言ではない。米国の個人消費の減少が鮮明となれば、中国の生産活動は再度軟化し、雇用・所得環境の悪化懸念はこれまで以上に高まるだろう。
それが現実になれば、米中経済の成長に支えられるようにして景気の持ち直しを実現してきた、わが国や欧州各国の経済に対する逆風は一段と強まる。足許、相対的に景況感が安定しているASEAN各国などの景気減速、あるいは後退の懸念も高まるだろう。
FRB議長は「痛みを伴っても利上げを行う」
世界的な景気後退が現実味を帯びてくると、世界の株価にはかなりの下押し圧力がかかりやすくなる。9月16日、フェデックス株の取引量は34.20百万株と前営業日(3.08百万株)から急増した。想定を上回る業績悪化によって、世界経済の今後の展開に関する懸念を強め、リスク削減に動く投資家は増え始めた。その一方、世界経済の景気後退などのリスクを過小評価する投資家は依然として多いようだ。
FRBやECBなど主要先進国の中央銀行は、インフレ鎮静化を目指して金融引き締めを徹底することになるだろう。今年8月のジャクソンホール会合でパウエルFRB議長は、痛みを伴っても利上げを行うとの強い危機感を示した。ユーロ圏でもドイツを中心に、インフレ鎮静化に集中すべきとの危機感は高まっている。世界的に金利は上昇するだろう。理論的に、金利の上昇によって、長い目で見た企業価値が減少するため、株価は下落する可能性が高まる。