ペンライトを振りながら『あしたのジョー』を観る実験

身体性認知の見地から、応援について検討した研究があります。認知科学の三浦慎司先生と川合伸幸先生は大学生を対象に、アニメ『あしたのジョー』の試合場面に登場するキャラクターを応援してもらい、その対象への好みや魅力度、強さを評価させました。

参加者は、具体的な動作としては、大型モニターの映像に向かって大きな太鼓を叩くような動きでペンライトを振るように指示されました。これはアイドルのライブなどで見られる観客の行動と同じです。実験に参加した大学生たちは、ひとりを除き、『あしたのジョー』のアニメを観たことはありませんでした。

実は、参加者には「アニメを見ながらペンライトを一定間隔で振り、振り方によってどのように動きのズレが生じるか測定する」というニセの目的を告げていました。ですから、参加者はしっかりペンライトを振るのですが、キャラクターを「応援」しているという自覚はないのです。

はじめて見るキャラクターを「応援」するとどうなるか

試合の場面はどちらが勝つともわからないもので、キャラクターは4人でした。実験には以下のような条件が設定されていました。

4人のキャラクターはそれぞれ、実験参加者がペンライトを振っている時に活躍していた人、ペンライトを振っている時には活躍していなかった人という役割があり、それはキャラクターによって固定しないよう参加者ごとにカウンターバランスをとって割り当てられます。つまり、参加者にとってペンライトを振るという行為は同じでありながら、応援対象の活躍ぶりは異なっていたのです。

もうひとつ、重要な条件があります。実験中にペンライトを振る、という行為には二種類ありました。ひとつは、先ほど言ったように、ライブでアイドルなどにペンライトを振るような動作です。もうひとつは、ペンライトを後ろに向けて自分の肩を叩くように振るという動作でした。これは、ペンライトを振るという動作は同じでも、ライブなどでの振り方とはまったく似つかない動きです。

さて、実験の結果はいったいどのようなものだったのでしょう。はじめて見るキャラクターについて応援しているという自覚もないまま一生懸命にペンライトを振ってみたら、こころになにか変化があるのでしょうか?