ネイルを見て「かなりのファン」から「推し」へ認識が変わった

職場の同僚に、フィギュアスケートの羽生結弦選手のファンがいます。スケート大会の前後には熱心にその話をしているので、かなりのファンであることは知っていました。でも私はなぜか、羽生選手を彼女の「推し」だと思ったことはなかったのです。

ある日、ふだんからおしゃれな彼女のネイルがとてもすてきだったので「そのネイル、すごくきれい!」と言ったら、「ありがとう! これ、羽生くんの衣装をモチーフにしてもらったの」というではありませんか。その瞬間、私は、彼女にとって羽生選手は「推し」なんだ! と気づいたのでした。

なぜ私は、彼女にとって羽生選手は「推し」であると認識するようになったのでしょうか? そこに、ただのファンとは違う「推し」とはなにかを考えるヒントがあります。

「BTSがやっていたから、SDGsピンバッジを身に着けたくなった」

ほかの例も見てみましょう。職場の別の同僚に、韓国のアーティストグループBTSのファンがいます。ある時、彼女がジャケットの襟にSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のピンバッジをつけていました。彼女は大学のジェンダー研究所の所長でもありましたから、それでつけているのだと思いました。すると「もちろんそれもあるけど……実はBTSが国連でのスピーチの時につけていたから、私もつけたくなって」とのこと。

なんとSDGsのピンバッジは「推し」と同じものを自分も身につけたいという、ひとつの「推し活」(「推し」にまつわるファン行動のことを「推し活」といいます)でもあったのです。

職場のさらに別の同僚と、「この前の連休はなにしてた?」と雑談していたら「横須賀でクルージングをしてきた」と言います。よくよく聞くと、湾内をめぐる遊覧船から自衛隊や米軍の艦船を見ることができるツアーとのこと。

私は、彼女がマンガ『ジパング』や『あおざくら防衛大学校物語』のファンであることを知っていました。だからそれが、単に艦船を見物するクルージングではなく、横須賀で実際の景色や艦船を見ながら、それらの景色や艦船がでてきたマンガの世界に浸るという「推し活」だったことがわかりました。私もそれらのマンガが好きなので、うらやましい気持ちでおみやげ話を聞かせてもらいました。