受験と団体スポーツの両立は非現実的

一般的に中学受験の勉強は、小3の2月から始まる。大手進学塾の受験コースがその時期からスタートするからだ。ただ、先にも述べた通り、近ごろは低学年から塾に通っている子も多い。1週間すべてが塾と習い事で埋まってしまっているのは論外だが、小4のうちは塾も週2~3日なので、習い事1つか2つを並行して続けている子は少なくない。実際、その程度であれば受験勉強にも差し障りはない。

ところが、小5になると状況は変わってくる。塾に行く日が週3~4日になって学習量が増えることに加え、学習内容に抽象的な概念の理解が盛り込まれ一気に難しくなる。そこで家庭でしっかり振り返りをする時間が必要になる。

感覚としては、小4のときよりも学習量が1.5倍に増える。そうなると途端に習い事との両立が難しくなる。ひとくちに習い事といっても、いろいろなものがあるが、特に両立が難しいのがサッカーや野球、チアリーディングなどの団体スポーツだ。団体スポーツは学年が上がるほど試合数が増え、忙しくなる。一方、受験勉強も学年が上がるほど、授業コマや模試の数が増える。

「うちは受験勉強だけでなく、本人の好きなこともやらせたい」
「うちの子は体力があるから大丈夫」
「○○くんは6年生の終わりまでサッカーを続けながら、難関校に合格した」

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よくそう言って、どちらもやらせたがる親がいるが、私は勧めない。それができた子もごく少数いるが、それはもともと地頭の良い子であったりして、あまり参考にならない。現実は、毎日のやりくりが大変になり、スポーツを頑張れば、疲れて勉強ができなくなり、勉強を頑張れば、集中力が切れて競技のパフォーマンスがうまく発揮できなくなり、どっちつかずになる。

子供の体力にも限界がある。「頑張ればなんとかなる」「やればできる」といった精神論は通用しないのだ。両方をつぶす恐れもあり、子供の自己肯定感は崩壊する。

私は、もし中学受験をする覚悟を固めたのであれば、こうした団体スポーツは小5の夏が終わったら、一度休むか辞めること勧めている。なかにはその時期に休むのは、チームに迷惑がかかるなど難しいという場合もあるだろう。それでも、どんなに遅くても小6になったら一度離れるべきだと思う。

ただし、それは受験の成功を第一に考えた場合だ。「わが家は何がなんでも○○中(御三家といった難関校など)に入れたい」と高い目標があるのなら、受験勉強に専念したほうが賢明だ。

そうではなく、子供が一生懸命に打ち込んでいることを応援したい。でも、中学は公立ではなく、高校受験がない私立中高一貫校に通わせて、その後も好きなことが伸び伸びできる環境を手に入れたいというスタンスなら、志望校のレベルを下げて無理のない中学受験をすることも可能だ。

つまり、志望校のレベルによって、続けるかどうかの判断が分かれるということだ。どちらを選ぶかは、親が決めるのではなく、必ず子供の気持ちを聞き、親子でしっかり話し合う必要がある。