「日本は朝鮮半島に関わるな」という韓国世論
さぁ、どうでしょうか。韓国軍側は、「域内で日本自衛隊と連合軍事訓練をする方案は検討すらしたことがない」しているし、韓国の国防部長官イ・ジョンソプ氏も「韓米日の共助は、原則としては正しい、しかし、韓米間の軍事訓練と、韓米日間の軍事訓練とは、意味が違う。アプローチの仕方もまた、違うものでなければならない」と話しています。
尹政権が「日本が、正しい認識を持つことが必要だ」と話したのと同じです。
別に心配しなくても、こんな状況で日本と韓国の軍事協力がうまくいくはずはないでしょう。困るのは、日本でも韓国でもなく、米国でしょうけど。
なにせ、韓国社会には、「日本は南北統一を望んでいない」とする主張が蔓延しています。これがまた、「日本は朝鮮半島に関わるな」という世論を後押ししています。この主張は、韓国ではほぼ定説になっており、大物政治家の公言からネットのコメントまで、幅広く同じ主張を見つけることができます。拙著でも、何度か取り上げた記憶があります。
尹大統領が日米韓協力を強化することはない
さっそくですが、以下、サンプルとして、仁済(インジェ)大学統一学ジン・ヒグァン教授の見解(2020年11月30日、釜山日報)を紹介します。
〈……日本は、朝鮮半島問題が解決されて、南北関係が改善されることを望んでいない。日本は、北朝鮮の非核化が行われ、朝米関係が改善され、外交関係が成立したり(※南北はお互いを「国家」として認めていないため、外交関係がありません)、平和体制が樹立されることを望まないでいる。
朝鮮半島が平和になったら、もはや「サンフランシスコ講和条約」(1951年9月)によるシステムから受けていた利益を受けられなくなるからである。このような日本の立場が確認されているだけに、日本を優先するバイデン政権の時代、日米に頼ろうとせず、私たちの統一のための外交がこれまでよりも重要になると思われる……〉
バリエーションは結構ありますが、趣旨は一つ、南北が平和になると、日本は喜ばない、という内容です。
さらに、日本は大陸進出のため、朝鮮半島を狙っているという話もかなり流行っています。2022年の大統領選挙で僅差で敗れた(尹48.6%、李47.8%)共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が、竹島領有権問題を「日本が韓国との軍事衝突を狙って、わざと仕掛けた装置(トリップワイヤー)」と話したりもしました。
さて、こんな世論があるのに、大統領がキャンベル調整官のように『現在』を認め、日米韓協力を強化することができるのでしょうか。北朝鮮関連なら、保守右派が支持してくれるから、なんとかなるでしょうけど。