そもそも、コレステロールは、人間を含めた動物の体を形づくる脂質の一種。性ホルモンや細胞膜の材料になるなど、生命体に欠かせないものです。加えて、コレステロールは、脳内で「セロトニンを運ぶ」という大役を果たしています。セロトニンは、脳の神経細胞間で、刺激や興奮を伝える神経伝達物質のひとつです。

神経伝達物質といえば、ドーパミンやアドレナリンが有名ですが、セロトニンはそれらの分泌量のコントロールにも一役買っている神経伝達物質の司令塔であり、「心」のコントロール役をつとめています。コレステロールは、そのセロトニンを運んでいるため、コレステロール値の高い人のほうが、うつ病にかかりにくいことがわかっています。また、いったん、うつ病にかかっても、治りやすいのです。

肉を食べることで、さまざまな健康効果が期待できる

さらに、コレステロールは、主要な男性ホルモン、テストステロンの材料にもなります。日本人がセックスレスになりがちなのも、「コレステロールを減らしたほうがいい」という誤った言説が広まった結果、男性ホルモンを減らしたことが原因のひとつだと、私は見ています。

さらには、コレステロール値が低いと、がんになりやすいというデータもあります。これは免疫細胞の材料が不足するからでしょう。また、コレステロールが多すぎると、「高コレステロール血症」となり、動脈硬化を引き起こすリスクが高まるのはたしかですが、少なすぎても、血管がもろくなり、脳卒中を起こしやすくなります。

そもそも、現在、日本人の平均寿命が世界トップクラスになった理由のひとつは、戦後、戦前とは比べものにならないほど「肉を食べる」ようになり、コレステロールの摂取量が格段に増えたことです。コレステロール摂取量が増えたことで、血管が強く、しなやかになり、出血性の脳卒中による死亡者が激減したのです。

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ビタミンは体だけではなく脳の健康にも深く関わっている

次はビタミンです。知っておいていただきたいのは、ビタミンは、体の健康だけでなく、脳の健康にも深く関わっていることです。

アメリカでは、知能指数とビタミンCとの関係について、次のような実験が行われました。幼稚園児から大学生までの351人を2つのグループに分け、Aグループには、血中のビタミンC濃度が高くなるような食事を与え、一方のBグループには、ビタミンCが不足するような食事を与えました。その状態でIQテストを行ったところ、Aグループの平均が113.2、Bグループの平均が108.7と、有意差が生じたのです。