「ブレインフード」とも呼ばれている大豆

「納豆が脳にも体にもいい」ことは、医学・栄養学の研究者の衆目一致するところです。良質の植物性タンパク質を、最も効果的にとれる食材だからです。しかも、値段が安い。スーパーに行けば、3連パックが100円ほどで手に入ります。納豆は、最安値の“サプリメント”といってもいいでしょう。

一般に、高齢者は、体重1キロ当たり、1日に1.2〜1.5グラム程度のタンパク質をとるのが望ましいとされています。体重60キロの人で70〜90グラムです。これは、肉70〜90グラムではなく、純粋のタンパク質の重量ですから、摂取するのはなかなか大変です。朝はタマゴ、昼は魚、夜は肉くらいのつもりで、タンパク質性の食材を食べて、初めて摂取できる量です。そこで、大いに活用したいのが、納豆などの大豆を素材とする食品なのです。

写真=iStock.com/yankane
※写真はイメージです

大豆食品は、脳にとっても、強い味方です。近年、大豆は、脳の働きを活発にする点でも注目され、「ブレインフード」とも呼ばれています。

脳内では、神経細胞(ニューロン)から神経伝達物質が分泌され、刺激や情報が別の神経細胞へ伝わっています。脳が活発に働いている状態とは、「神経伝達物質の量が多くなり、シナプス間を活発に行き来している状態」といっていいのですが、大豆は、その神経伝達物質の重要な原料「レシチン」をたっぷり含んでいるのです。

レシチンは、脳内でアセチルコリンという神経伝達物質に変化します。アセチルコリンが不足すると、脳内の情報伝達がうまくいかなくなります。認知症患者の人には、アセチルコリン不足の人が多いことがわかっています。大豆を素材とする食品、納豆や豆腐、豆乳、みそ、きな粉などを食べれば、そのレシチンをたっぷり摂取できます。中でも、納豆は、大豆の栄養をほぼそのままの形で摂取できる優秀な食材なのです。

70歳を過ぎたら、むしろコレステロールが必須

私が講演などで「高齢者ほど肉を食べたほうがいい」とお話しすると、かならず「コレステロール値が上がるのが心配で」という質問の声が上がります。

そうした不安に答えるため、ここで、声を大にしていっておきますが、「コレステロールは、体に悪い」というのは、フェイクニュース、間違った思い込みです。むしろ、老後、元気に暮らすためには、コレステロールは不可欠な物質なのです。