日本の潜在的危機は深まっていく
このように「有事がない」なんてことはありえない。万が一、諸国民が公正で信義に溢れる人たちばかりでも激甚な天災は起きるし、新しいウイルスは人間の言うことを聞いてはくれない。
日本も「例外的に有事がなかった時代」が終わり、「いつでも有事が起こりうるという通常の状態」に戻ったのである。
そんなさなかに、この国は、政府もメディアも、ある意味、多くの日本国民さえも、未だに「有事がないという建前は現実でもある」という世界観から脱却できていない。
そんな縁起でもないこと、あってはならないことは起きない、だからそれを前提にした制度や仕組みもあってはならない、という現実歪曲空間に閉じこもったままだ。
その結果、有事に直面するたびに有効策を講じられず、大きな効果が見込める施策を断行する勇気もないため、「グダグダ」なパターンを繰り返す。
高度成長期以降の「昭和元禄」天下泰平の時代がもたらした「昭和的グダグダ感」が続く限り、この国の潜在的危機が深まっていく。
(注釈)
※1 科学・技術・工学・数学の理数系人材育成を総称する言葉。経済成長に必要不可欠な教育政策
※2 規模や程度を拡大もしくは縮小したりすること
※3 2003年から4年間だけ存在した時限的な官民共同組織。不良債権処理、企業再建に力を振るった
※4 社会人が必要に応じて学校で再教育を受け、仕事と教育を繰り返す循環・反復型の生涯教育体制