第一の条件は伊藤レポートで注目の「ROE8%」

そこで私は、もう東証の市場区分に頼らずに、自らオリジナルのプライム市場、名付けて“はっしゃん式プライム市場”を編成してみることにしました。本来のプライム市場の狙いである「外国人投資家の投資を呼び込む」ために重要だと思われる3つの条件を設定し、順に絞り込んでいます。

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はっしゃん式プライム市場の第一条件は、「ROE(自己資本利益率)8%以上」です。これは2014年、経産省のプロジェクトとしてまとめられた約100ページにものぼる報告書、通称「伊藤レポート」の中で、企業の持続的な成長のために達成が必要であると提言されたことで注目を集めた指標です。

ROE=純利益÷純資産(%)

ROEは企業が資本をいかに効率的に利用して利益を上げているかを示す指標で、日本の株式市場の売買の7割ほどを占めるといわれる外国人投資家が重視するとされています。純利益を純資産で割って算出するので、成長を続けている企業なら純資産の増加を上回る利益成長が続き、ROEは増え続けることになります。

ROEの数値そのものには業種や企業によって差があるのですが、伊藤レポートでは「グローバルな投資家から認められるにはまずは第一ステップとして、最低限8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである」と言及していることから、この8%という条件をそのまま流用しました。

ただし、本来の計算式では最終の当期利益(純利益)を分子とするため、特別利益や特別損失といった本業以外のイレギュラーの要因が加味されて、本来の成長性を反映できない恐れがあります。そこで、はっしゃん式プライム市場のメンバーを抽出する際は、純利益の代わりとして「経常利益の70%(経常利益×0.7)」の数字を使いました。

海外で稼いでいない企業は除外

次なる条件は、「海外売上比率10%以上」です。

人口減少が見込まれる日本市場だけで勝負している企業は、素朴に考えて長期的な成長は見込みにくいでしょう。持続的に成長していくには、ある程度海外に出て勝負し、成功している企業である必要があります。海外で利益を上げて日本を豊かにしてくれる企業のみに絞り込むには、売り上げの1割程度は海外から得ている企業である必要があると判断して設定しました。

このため、KDDIやJR各社など、一般的には優良銘柄とされていても、海外展開をしていない企業や、していても10%以下の企業は除外されています。

ちなみに海外売上比率のデータは、『会社四季報2022年1集新春号』の掲載データを参考にしました。はっしゃん式計算式によるROE8%を満たした企業の中から、海外売上比率10%以上の条件を満たす企業をピックアップしたところ、384社に絞り込まれました。