「やり過ぎ」と「依存」の境界線

「依存」とは特定の物質や行為等を、ほどほどにできない、あるいはやめたくてもやめられない状態を指します。依存する対象が物質の場合(物質依存:例「アルコール依存・ニコチン依存・カフェイン依存」など)と、行為への依存とに分けられ、ゲーム依存は後者にあたります。行為への依存は医学的には「行動嗜癖しへき」と呼ばれます。行動嗜癖の例としては、ギャンブル依存や買い物依存、パチンコ依存などが挙げられます。

これらにのめり込み、生活面で問題が起こっても、やめられない状態に陥ってしまうのがいわゆる依存症です。とはいえ、ゲームの「やり過ぎ」が「依存症」に当たるのか、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

「やり過ぎ」と「依存」の境界は、ゲーム時間の長さに加えて、「健康面や生活面、社会的に何らかの問題が生じているか」をポイントとして見極めるのがよいでしょう。

<ゲーム依存によって生じる問題の例>
・身体的影響
眼精疲労、ドライアイ、視力低下、頭痛、頸部けいぶ痛(首の痛み)、肩や手指の痛み
・生活習慣の乱れ
睡眠不足、食事がおろそかになる、会社や学校を休みがちになる
・経済的問題
多額の課金をしてしまう、借金をしてまで課金する

その他、物に当たる、暴力を振るってしまう、ゲームができないと無気力になる、イライラするなども挙げられます。

大人のゲーム依存の場合には、特に、経済的問題が表出することが多く、本人はただハマっているだけと思っていたが、高額の請求が届き依存状態に気付くケースが多いようです。

写真=iStock.com/Everyday better to do everything you love
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「やめられない」のはなぜなのか

では、やめたくてもやめられないのはなぜでしょうか。これは単に意志が弱いということではなく、脳の働きによるものと考えられています。依存症患者の脳内で何が起こっているか簡単にご説明します。

・「報酬系回路」が変化している

動物の脳内には「報酬系」という神経回路が存在します。これは、ある行動に伴って心地よさや楽しさなどの刺激(報酬)を感じた際に活性化されるもので、「報酬が得られることがわかると、脳はさらなる報酬を求めてその行動を続けようとする」という仕組みを持っています。

この仕組み自体は、やる気を引き起こしたり積極的な行動を促したりする、生きるために必要なものです。ですが、ゲーム依存の場合は、ゲームによる刺激に慣れてしまうために報酬系の反応が鈍くなっているといわれます。そのため、過度に依存対象を求めるようになり、渇望やとらわれにまで発展してしまうと考えられます。