違法薬物のなかで最も禁断症状が激しいクスリはどれか。元厚生労働省麻薬取締部部長の瀬戸晴海さんは「さまざまな薬物を経験し、慢性中毒に陥って命を落とした薬物乱用者がいる。彼は、ヘロインは効果が切れた後の苦しみが激しく、『二度と御免だ』と語っていた」という。瀬戸さんの新著『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮新書)より紹介する――。(2回目)
若い女性が過剰摂取
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世界中で急速に蔓延している危険な麻薬

依存性薬物の種類と作用について説明しましょう。

捜査現場で押収される薬物は30~40種におよびますが、日本で主として乱用されているのは、覚醒剤、大麻、コカイン、MDMA、LSD、睡眠薬および指定薬物(危険ドラッグ)の一部です。

ただ、近年では「ケタミン」という麻薬の乱用も顕著になっています。ケタミンは麻酔薬の一種で、幻覚および抑制作用を有しており体外離脱感覚(意識が身体から離れ、自分の身体を空中から見ているような感覚)も生じるとされます。

粉末形態で出回っており、クラブではMDMAのようにパーティードラッグとして使われています。すでに世界的に流行していて、中華圏では「Special K(スペシャルケイ)」や「K他命(ケタミン)」などと呼ばれ、若者が使用する薬物のトップの地位を占めている。日本でも今後、急速に蔓延することが懸念されます。

ヘロインは日本では1960年頃に大流行しましたが、現在では捜査の現場でもほとんど見聞きすることがありません。危険ドラッグの一種で悲惨な事件、事故を誘発した合成カンナビノイド類も下火になってきています。1990年代後半に流行したマジックマッシュルームと呼ばれる幻覚キノコも、2002年に国が麻薬原料植物に指定してからは姿を消しました。薬物にも、時代に応じて流行りすたりがあるわけです。

覚醒剤、コカインなどは脳を刺激して強制的に興奮させる興奮系(アッパー系)。ヘロインや大麻、睡眠薬は脳を麻痺させて気分を鎮めたり眠らせたりする抑制系(ダウナー系)。LSD等の実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする幻覚系(サイケデリック系)に分類されています。

大麻は、幻覚作用も有しており、MDMAは、興奮と幻覚作用、ケタミンは幻覚と抑制作用の両方を有しています。

乱用者「健太」が語る違法薬物体験記

私が何度か逮捕し、また、病院に搬送した薬物乱用者に健太という男がいます。生きていれば40代後半になりますが、残念ながら一昨年、心筋梗塞で命を落としました。原因は覚醒剤の過剰摂取と推察されます。

健太は学生時代にバックパッカーとして東南アジアや欧米各国を旅しました。そこでまず大麻を覚え、その後、覚醒剤、コカイン、MDMA、LSD、ヘロインと次から次に新しい薬物を経験。危険ドラッグやペヨーテ(アメリカ南西部からメキシコ中部を原産とするウバタマサボテン。メスカリンという麻薬幻覚剤を含有する)まで経験したと聞いた時は、さすがの私も驚きました。

3カ国語を操る語学に長けた男で、大学卒業後も定職に就かず、思い立ったように海外放浪の旅を続けながら、時折、通訳をして生活費を稼いでいました。この健太が、ことあるごとに実体験に基づく薬物の作用を私に話してくれたのですが、これが未経験者にも分かりやすい。

読者の皆さんに薬物を体験してもらうわけにはいかないので、イメージを掴むためにその一部を紹介しましょう。

例えば、「麻薬の王」の異名を取るヘロインについて、健太はこう話しています。