グズグズ、ダラダラ……夏休みに入って生活にケジメがなくなってしまったわが子にうんざりしている親は多いだろう。作業療法士の菅原洋平さんは「子供がダラダラするのは決して性格や気持ちの問題ではない。子供の脳を“やる気にさせる”仕掛けがあります」という――。

※本稿は、『プレジデントFamily2022年夏号』の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Rawpixel
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ダラダラっ子をシャキッとさせるすごい仕掛け

私の職業である作業療法士というのはリハビリの専門家です。脳の一部を損傷した人に、残りの脳を使って一定の作業をできるようにしたり、知的障がいや発達障がいで人とのコミュニケーションが苦手な子供の治療を行ったりしてきました。

いわば人間の脳と体の力を最大限引き出し、その人がやりたいことを実現できるようにサポートする仕事です。その経験から私が確信しているのは、「ダラダラしている子=なかなかやる気になれない子」というのは決して性格や気持ちの問題ではない、ということです。脳がやる気を出す状態になっていないだけなのです。

人間の脳をコンピュータに例えると、視覚や聴覚からの刺激はコマンド(指示)にあたります。特定の刺激がコマンドとして脳に与えられると、脳は私たちの意思とは関係なく、自動的に体に指示を出すという働きをするのです。例えばテーブルの上にテレビのリモコンを置いておくと、それを見た脳はそれをつかむように手に指示を出します。「よし、見よう」と決めてからの行動ではなく、“無意識に”テレビのスイッチを入れてしまっているのです。

脳は視覚からの情報にもっとも大きな影響を受けます。やる気を出させるには、目に入る環境を整えることが必要なのです。やってはいけないことは脳に見せてはいけませんし、一度見せてしまったら逆らえないのです。

宿題とテレビの例で言えば、まずテレビのリモコンよりも先に宿題が見えるようにします。リモコンはすぐには見えない場所に置くこと。学校から帰ったら、すぐにカバンを開けて宿題を取り出し、ノートを開き、1問目だけやってみる。この一連の流れを習慣にしてしまうのです。脳は新規の作業を面倒くさがりますが、一連の流れの中に宿題が位置づけられていれば継続の作業になるので、スムーズに着手できます。

脳をプログラムするのに、もう一つ大事なことが「言語化する」こと。やるべきことを言葉に出して、聴覚から脳にコマンドするのです。

「今から宿題をする」と明確な言葉を声に出して言いましょう。「宿題をやらなきゃな」とか「しっかりやろう」といった主観的であいまいな指示は脳が混乱します。また、逆に、宿題をする前に「面倒くさい」などとつぶやいたとしましょう。すると、その言葉がコマンドになって脳は「宿題=面倒くさい」と認識してしまい、やる気は下がってしまいます。

脳をコントロールするには「脳への刺激」がカギとなることを踏まえ、ダラダラした子がやる気になる仕掛けを、生活の場面別に具体的にお伝えしましょう。

その前にもう一つ重要なことがあります。ダラダラの原因のほとんどが睡眠不足にあることを覚えておいてください。どんなに脳をプログラムしてバージョンアップしたところで、脳が目覚めていなければ、コンピュータが起動していない状況と一緒ですからね。

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