コロナ禍は、新型コロナウイルス感染症の感染リスクのみならず、日本人の健康に多大な影響を与えていると指摘するのは、自律神経研究の第一人者である小林弘幸・順天堂大学医学部教授だ。小林さんは「これまで私は自律神経を乱さないための提案をしてきましたが、日本人の多くがすっかり“自律神経が乱れた状態”になってしまいました。これから必要なのは、自律神経を取り戻す“失地回復戦”です」と語る──。(第1回/全3回)

※本稿は、小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「なんとなく不調」の原因は自律神経の乱れ

慢性疲労やめまい、頭痛、食欲不振、手足の冷え、むくみ、肌荒れなどの「なんとなく不調」を訴える人が、このコロナ禍で急増しています。

以前は、「不定愁訴ふていしゅうそ」という言葉でまとめられていたものですが、いまやネット上などでは、「コロナ疲れ」や「自粛痛」といった言葉とともに、あちらこちらで辛さを訴える声が見られるようになっています。

もちろん、こうした“症状”の背景には、新型コロナウイルスへの感染だけでなく、何かの疾患が隠れている場合もあります。ですから、まずは医療機関できちんと検査を受けることが大切です。

しかし新型コロナウイルスに感染しておらず、また、体に何らかの疾患があるわけでもないのに、「原因不明の不調」を訴える人が急増しているのです。

ベッドにいる病人
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自律神経の乱れによる免疫力の低下

日本で最初に新型コロナウイルス感染者が確認されてから、すでに2年以上が経過しました。その後、日本を含めて世界中がたどったパンデミックの経過については、みなさんもよくご存じの通りです。

2021年10月、私が勤務する順天堂大学医学部附属順天堂医院では、総合心療内科に、長期にわたって新型コロナ後遺症で苦しむ患者さん向けの漢方外来を開設しました。と同時に、たちまち予約が殺到し、患者さんであふれてしまいました。

新型コロナウイルスが体内から消えたあとでも、多くの方が心身ともに苦しんでいるという現実に、私たちは直面しました。

そして、それと同時に、実は感染を免れた多くの方々の心と体にも、さまざまな異変が起こっていることにも気づかされました。「原因不明の不調」「なんとなく不調」の激増です。

これには自律神経の乱れによる免疫力の低下が大きく関与していると私は考えています。