石井氏の名刺には、Smoothが、秦氏にはSurprisingが刷られている。
「1人ひとりの価値観は異なっていていいのです。インナーブランディングの重要な意義は、個々の価値観を確認し、次に、会社の価値観と比較し、その乖離を認識するということ。そして、それを埋めていく作業を行う。自分と会社の価値観を一致させる必要はもちろんなく、全員の意見は揃わなくていい。皆が自分の力で考えられるようにならなければ、いいサービスはできません」(石井氏)
もちろん、両者の重なっている部分が多ければ多いほど、お互いにハッピーだ。
インナーブランディングにおける人事部の役割も重要となってくる。企業説明会、学生向けセミナーなどの採用活動時、企業の文化としての「ブランド価値と期待」を十分説明し、それに共感した「人財」を採用することができれば理想だからだ。早い段階で企業のアイデンティティをアナウンスし、共感できる人材を採用することで、行動指針にスムーズに融和することが可能となる。
ブランドの浸透には、社員の積極的な協力が不可欠だが、このとき、個人があるシステムに惜しみなく協力をするのは、そのシステムで自分が得をする、損をするということではなく、互いの知性や考え方を尊重するプロセスがあることが重要だ。
こうしたクロスファンクショナルな交流を続けることによって、固定概念を崩した組織構造の変革を実現し、全社員の血となり肉となるブランド構築が可能となる。