計画がなく、行き当たりばったりで聞いている

何度も言うように、部下の話を聞くときには、話をどの方向へ向かわせるかを考えて聞くことが必要です。その計画がなければ、部下の話はさまざまな方向へと流れていってしまいます。

にもかかわらず、上司の方たちに「部下の話を聞くときに計画性を持って聞いていますか?」と聞くと、十中八九、「計画? 持っていません。必要なんですか?」と、そんな答えが返ってくるのが現状です。

そういう方たちに「どうして計画を持って聞かないのか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきます。「だって、部下が何を話すかわからないのに、計画なんて立てようがないじゃありませんか!」

たしかに、部下に自由に話させるときには、何を言ってくるかわからないと思います。でも、私が言う計画とは、過程ではなく、言葉を変えれば「ゴールを決めてください」ということなのです。

目指すゴールを決めることなく、部下に自由に話してもらったら、「息子が最近、自転車の練習を始めた」などという、プライベートな話題や雑談だけで面談が終わってしまう可能性だってあります。

これ、笑いごとではなく、実際に、貴重な面談時間が、「部下の家族旅行の話を1時間聞いて終わってしまった」という話を聞いたこともあります。

言い換えれば、「業務で聞くときは、無策で聞かない」ということです。部下との面談におけるゴールとは、例えば、次のようなものです。「部下の自己成長を促す」「倫理観のない行動を是正する」「心身の健康状態を確認する」「いくつかの行動パターンを特定する」「業務の再現性を高める」部下によって、これらのゴールのうちどれか(あるいは複数)を設定して面談に臨むのです。

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自己成長ができているし、倫理観もある部下なら、今回の面談では業務の再現性を高めることをゴールにするか……と、そんなイメージ。

これらのゴールを部下によって設定していれば……。

「そう、息子さんが自転車の練習を始めたんだ。成長しているね、じゃあ、今日は○○さんの成長について話そうか」

と、雑談から本題への方向性を示したり、より直接的に

「この前の商談がうまくいったのは、何がよかったのかについて話そうか」

など、ゴールへ向けて水を向けることができるようになるはずです。

せっかちで、話を最後まで聞かない

上司にとっては、部下がする「仕事に関する話」というのは、だいたいどんな話になるかわかるものです。

部下が話し始めた時点で、「こんなことを言ってくるんだろうな」なんて想定して、「言うぞ、言うぞ……ほら、やっぱり言った!」などと考えてしまいます。

そうすると、部下が話し終わるのを待てずに、結論を先取りしてしまいがちです。

特に、部下が言葉に詰まって沈黙しようものなら、1秒も待つことができずに、言葉を引き継いでしまう。

でも、実は、そうやって上司が話の続きを先取りしなければ、部下の話はまるで予想していなかった展開をしていたかもしれないのです。

その展開が部下の本音であることが多いのですが、それを聞く前に話の腰を折ってしまうので、上司は部下の本音を聞けないままで終わってしまう。

部下の本音を聞き出したいと思ったら、ぜひ、「待つことの大切さ」を認識してください。

部下が自分から話し始めるまで待つ。

部下が話し終えるまで待つ。

いや、もう「待つ」というよりは、部下が話すままに見守る、あるいは観察するというイメージの方が適切かもしれません。要点がわかりづらく、曖昧な話をする部下も、話がゆっくりな部下も、その部下なりに100パーセントの力で精一杯に語っている、訴えているのだと考えてみましょう。

そういう意味では、合いの手を入れるのはよいとしても、相手が言葉に詰まったとき、ヘタな助け舟は出さない方がいい。「それは、こういうことかな」なんて言うと、過干渉な状態になってしまいます。優秀な上司ほど、部下が何を話すか予想できてしまいます。

しかし、部下は人間ですし、AIとは違って、個性的なアイデアを秘めているかもしれないのです。

部下の言葉を先取りするのをグッとこらえて、部下が自分の予想したことと違う発言をするのを楽しむくらいの気持ちで話を聞けば、関係性が大きく変化します。