過干渉で、部下に任せられない
上司が過干渉だと、部下は「本音なんて伝えなくても、最後はなんでも上司がやってくれる」と思って、業務報告だけをして、課題は上司に丸投げし、自分では何も考えなくなります。この過干渉の上司の方に話を聞くと、だいたい、こんなことをおっしゃいます。
「心配で、部下に仕事を任せられない」
「部下に任せていたら目標が達成できない」
「自分でやった方が早い」
こういうことをおっしゃる上司は、部下との関係を「指示・命令」と「管理」という点からしかとらえられない傾向があります。
「あの案件、どこまで進んでる? うん、よし問題ないな」
そんな言葉少ないやり取りで、部下とコミュニケーションを取った気になっているわけです。
「あっちの件は? 何、遅れてる? 貸してみろ、あとは俺がやっとくから」
こんな調子で部下の仕事に干渉して、自分でトラブルシュートしてしまう方もいます。これでは、部下が育ちません。仕事を奪わないまでも、「あーしろ、こーしろ」と指示・命令ばかりでも同じこと。部下が自主性を持つわけがありません。
「いや、自分は部下から話を聞いて、部下が育つように指導している」
中には、そんなふうにおっしゃる方もいます。
でも、その中身を聞いてみると、部下に「どうして言った通りにできないんだ」「この前も同じミスをしたじゃないか」と、まるで問い詰めるような言い方をしている。そして、アドバイスという名の指示をしてしまっている……。
部下の成長欲求に火がつかないのも当然と言わざるを得ません。
夏休みに「宿題はやったか」と子供に言い続ける親は最悪
ある広告会社のリーダーの実例です。
その方、部長になっても、事業部長になっても、本部長になっても、大きな案件や重要な案件は部下に任せることができず、ずっと現場に出向いていました。
私が「部下に任せたのなら、上司が現場に行く必要はないでしょう」と言ってもなかなか思い切れない。「私が行かないと、収まりがつかないんですよ」「それって、本当ですか?」「本当だと思います」「でも、部下に任せたんですよね」「任せてはいるんですが、任せるとちゃんとならないんですよ」「それじゃ、ずっと、ちゃんとならないままですよね」「それはそうですが……」「一度、『現場に行かない』というのをやってみませんか?」「それだと収まりが……」「現場に行かなくても収まりがつく方法を考えませんか」「現場に行かなくても収まる方法ですか……そうですね、任せたんですもんね」
そんな会話をして、最後は、「自分は現場に行かないけれど、任せっきりでは怖いので、進捗状況はこまめに聞く」という形で落ち着きました。
部下に育ってはもらいたいけれど、任せきりは怖いのであれば、この方のような方法もひとつの手だと思います。過干渉で一番よくないのは、まるでヘリコプターペアレント(子どもの学校の上を常にヘリコプターで飛んでいて、子どもに何かあるとすぐに降りてくるモンスターペアレント)のように、常に干渉し続けてしまうことです。
子どもの夏休みの宿題にたとえれば、毎日毎日、「宿題はやったか」と言い続けて、子どもの自主的なやる気をそいでおいて、最終日に手伝ってしまうという最悪のパターン。
放任はするけど押さえるところはちゃんと押さえるという意味では、「宿題をやりなさい」とはひと言も言わないけれど、子どもから見える場所で家事をする……と、そんなイメージがよいのかもしれません。