聖母のようにほほ笑みを絶やさない優子

テレビ情報誌の編集者として働く沖縄出身50代女性のB子さんが解説する。

「でも、にいにいをそんなふうに育ててしまった母親の優子(仲間由紀恵)にも責任があります。優子は非常に愛情深い優しい女性なのですが、とにかく男の子に甘い。にいにいがドル紙幣の交換詐欺に遭った時も、自ら親戚に借金をしてお金をかき集めている。本当ならば『そんなウマい話はあり得ない!』と叱り飛ばして息子をいさめるのが母の役目でしょう。しかしこの母にしてこの子あり。貧しさは環境や時代のせいだけではなく、親の無知と浅はかさが招いているのかも、という見方もできます」

優子は子供たちが小さい頃からどこか危なかっしい部分があった。

非力ながらも土木工事に従事して体を壊したのは、子供たちの運動靴や体操着を購入するためだが、にいにいが誤って飼っていた豚の前に置きっぱなしにしたため、靴も体操着もズタボロに。それでもにいにいに向かって聖母のようにほほ笑みを絶やさない優子……。視聴者は怒りを通り越して、もはや彼女の精神構造を心配してしまうレベルだったのだ。

「女親というのは、たいがい息子には甘いもの。彼が何歳になってもかわいくて仕方がないのはわかります。でも、優子の度を越した甘さや優しさは子供を増長させ、見ている人間をイライラさせるだけです。沖縄の人間はおっとり優しい人が多いとは思いますが、にいにいと同様共感ができずイラーっとさせるキャラ設定は、ある意味ウチナンチュへの侮辱ですよ(苦笑)。これでは朝から見たくなくなる」(前出B子さん)

後日放送のエピソードで、優子の桁外れの優しさは、第二次世界大戦の沖縄戦で家族を亡くしたトラウマがあったからだと判明した。しかし、それを差し引いても甘すぎる。

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インテリ和彦の優柔不断・傲慢ぶり

違和感のある役柄はまだほかにもいる。にいにいほど“おバカ”ではなく、むしろ知的レベルが高いと思わせるのが、暢子の幼なじみの和彦(宮沢氷魚)。この人も戦犯かもしれない。

とにかく視聴者をイラつかせることこの上ない。インテリぶりから起因する優柔不断さや傲慢ぶりがそれに拍車をかけている。

ちなみにドラマのキャラ設定が視聴者の共感を得られないのは前述のとおりだが、シチュエーションも唐突すぎてこれまた共感できない。

例えば、暢子と約10年ぶりに東京で再会した和彦は新聞記者になっていた。暢子が働いていたイタリア料理店のオーナーが、その新聞社の記者と懇意にしていたので「暢子は常識がなさすぎて店では使えない。だから、あなたの新聞社でボーヤ(下働き)として鍛えてくれ」と記者に頼み込む。そして新聞社の記者となっていた和彦と再会するというわけだ。

しかし、だ。暢子に常識がないのは前からわかっていたことであり、なぜ今さらそれをオーナーが言い出すのか、しかも人手不足の料理店からわざわざボーヤに出す意味もわからない。

つまりは和彦と再会させるためのドラマ演出上の苦肉の策。この類いの無理やりなシチュエーションが、ドラマのあちこちに散りばめられている。

話を戻そう。