和彦の戦犯確定エピソードは2つ
和彦の戦犯確定の2つ目エピソードは、遺骨収集をするご老人に向かい「今のお気持ちをお聞かせください」と詰め寄る取材マナーのかけらもないシーン。しかも、ご老人は事前に取材を拒否していたのだ。
「メディアとして権威が失墜した現在ならいざ知らず、70年代のメジャーな新聞社なら、確かにこうした無礼な手法はやりかねないかもしれません。大新聞社が取材をやってあげているという上から目線な態度は、かなりリアルかも。ただ、視聴者の印象は悪い」とB子さん。
もしかしたら、この老人が、ドラマの流れと、沖縄で生まれ育ったキャクターたちを変えるゲームチェンジャー的な役割を果たすのかもと思いたい。
なぜなら、本土復帰前後の沖縄のあり方を丁寧に描写するシーンがほとんどないからだ。あるとすれば、やんばる地域特有の共同売店が舞台として頻出すること、車が左側通行になったこと、にいにいがドル紙幣交換詐欺に遭ったこと、それ以外は、当時の首相・佐藤栄作が国会で復帰を記念して「万歳!」と叫んでいる資料映像が挿入されているぐらい。今のままでは、何のために朝ドラは沖縄を舞台にしたのか、はなはだ疑問である。と書いているうちに、放送回は進み、沖縄戦の悲惨さを伝えるシーンが徐々に盛り込まれてきた。
「ちゅらさん」の二番煎じと呪縛。黒歴史にされた『純と愛』
さて、前出A子さんが大好きだったという「ちゅらさん」は、女優・国仲涼子の出世作で、朝ドラ史上初めて沖縄を舞台として描かれた。視聴率こそ最高ではなかったものの、続編が次々と作られ、2022年も再放送された。
「ちゅら」「おばぁ、おじぃ」「三線(さんしん)」「サーターアンダーギー」など、沖縄の独自の方言や文化が、周知されるようになったきっかけといってもいい。
八重山諸島の小浜島から那覇に移り住んだ一家の大黒柱の父は、いつでも三線弾きながら歌う陽気な男、住所不定無職のごく潰し長男、ヤマトンチュの男子と恋をし、夢に向かって東京で修業する主人公などと、話のベースはとても似ている。荒唐無稽なキャラ設定としてはどっちもどっち。
むしろ、「ちゅらさん」の主人公は、長男の兄が手を染めた怪しい商売に自ら肩入れするなど、暢子よりもクレイジーぶりが際立っている。しかし、どうしてここまで評価が分かれたのか?
「『ちゅらさん』の兄はどうしようもないけれど、ちゃんと心を入れ替えて家族に寄り添っていました。でも、にいにいには改心の気持ちがなくいつまでも甘ったれな長男坊から成長しない。ちゅらさんの登場人物も最後には立派に自立します。しかしなんと言っても“おばぁ”の存在が大きいですね。演じた平良とみさんは、リアルなおばぁといった感じで、彼女が発する言葉一つひとつが心に染み入りました」(A子さん)
「ちゅらさん」をまねたものの、視聴者が共感するストーリーやキャラクター、おばぁのようなリアルかつ強烈な演者を揃えることができなかったということか。
何かにつけ、デキがよかった「ちゅらさん」と比較されるのは、製作陣もつらいだろう。
「沖縄が舞台の朝ドラには『純と愛』(2012年度下半期に放送、夏菜・風間俊介主演)もあります。朝ドラにしては珍しく、ちょっと暗くて救いのない話で最後もバッドエンド。よく言えば“攻めた”ドラマで、私は嫌いではなかったのですが、視聴率が低く結果につながらなかった。『純と愛』の悪夢を封じるために、陽気な王道路線に戻したのかなとも思います」(B子さん)