グローバル化を阻む「年功的人事制度」を払拭する

日本企業の人材のグローバル化を阻む最大の要因は、年功的人事制度にあると指摘されている。同社はこれを払拭し、年齢や能力に関係なく、本人が従事している職務や役割に着目し、同じ役割(ポスト)であれば給与水準も同等にする仕組みを導入しようとしている。世界共通の制度を今年中にも日本に先行導入する予定だ。

もちろん世界の全社員を同一の給与制度や教育体系で動かそうというわけではない。それぞれの国、独自のローカルな文化に基づく制度は尊重しつつ、企業理念に基づく世界共通の価値観を横串で通す。同時に経営に関わるグローバルリーダー層を形成し、世界の資生堂をマネジメントしていくという戦略である。

しかし、人材のグローバル化というパラダイムの転換は、資生堂の社員にとっては不安もあるだろう。外国人の上司が異動してくれば当然英語力も問われることになる。大月部長は今後の姿についてこう語る。

「明日から上司はアメリカ人ですかというようなことを言う人がいますが、そんな部署ばかりではありません。国内には2万5000人の社員がおり、日本のマーケットも非常に大きい。グローバルなヘッドクオーター機能を担うのはその中の1000人ぐらいかもしれませんし、残りの2万4000人はあくまでも日本のマーケットでの能力の発揮が求められます。たとえば国内に1万人いるビューティーコンサルタント(美容部員)は日本のお客様に相対する仕事であり、そこで価値を発揮してもらうことが必要です。国内の営業も同様に日本の中でのキャリアパスを積んでいくことは当然認められるべきだと思います。一方、本人の希望で資生堂のグローバル化に憧れて入社したという人は、グローバルに活躍できるチャンスが十分にありますし、その意味ではキャリアの選択肢が広がることになります」