長時間労働が解消されても、官僚を目指す人が増えるかは別問題
昨年8月、人事院は、給与の勧告とあわせて「公務員人事管理に関する報告」を公表した。そこには、男性非常勤職員に対する配偶者出産休暇や育児休暇の新設や、残業時間をきちんと把握して残業代を払うこと、さらに人手不足職場に人員増を行うことなどが盛り込まれた。いわば霞が関の「働き方改革」である。長時間労働が常態化している霞が関を変える、というのだ。
もちろん、そうした「ブラックな」労働環境が、官僚たちに転職を決意させる引き金になっているのは事実だが、それが「ホワイト」になれば、官僚を目指す人が増えるのか、というとまた話は別だ。東大卒業生の人気就職先になっている外資系コンサルは、決して労働時間が短いわけではない。仕事はハードでも、年齢に関係なく、力のある人がどんどん抜擢され、大きな仕事を任される。そんな「やりがい」が多くの有能な若者を惹きつけている。
公務員の給与でも、局長になれば年収2000万円近くになる。課長でも1000万円を超える人もいる。つまり、ポストが上になれば、民間企業と遜色ない給与を出す仕組みになっているのだ。だが、そこにたどり着くには、30年以上の年月がかかる、という今の人事制度に問題がある。仮に40歳で局長になれる能力主義の人事制度で、若手の課長や課長補佐でも国を動かす大きな権限を持てるような仕組みになっていれば、どんなにハードでも役人を辞めない、という中間官僚が少なくない。
入省年次に従ってほぼ一律に昇進し、全員一斉に給与水準を引き上げるショーワな人事制度から決別する抜本的な公務員制度改革こそ、霞が関に優秀な人材を集めるために必要だろう。人事院が古い頭を切り替えることを期待したい。