超人気企業を3年以内に辞めてしまう人は、なにを考えているのか。トヨタ自動車に総合職として入社し、人事部に配属となるも3年で辞めた髙木一史さんは「入社してしばらくすると『みんな、会社のなかでは本当の自分を隠している』と感じるようになった。そして、これはトヨタだけの問題ではなく、日本の大企業に共通する問題だと気づいた」という――。

※本稿は、髙木一史『拝啓 人事部長殿』(サイボウズ式ブックス)の序章「ぼくはなぜ、トヨタの人事を3年で辞めたのか」を再編集したものです。

背景の桟橋と同化するシュールな絵を持った人
写真=iStock.com/francescoch
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入社早々、全く志望していない人事部に配属

2016年4月、ぼくは総合職約700名の新卒社員の1人として、第一志望だったトヨタ自動車株式会社に入社しました。泥臭く、「現地現物」でものづくりを支える、そんなかっこいい先輩たちに憧れていました。

配属の第一志望は調達部でした。就職活動でお世話になった先輩のほとんどが調達部で、サプライヤー(仕入れ先)と一緒に原価低減に取り組んでWin-Winの関係を築いてゆく、そんな社会人にぼくもなりたいと思いました。

第二志望、第三志望も、どちらも工場の生産に関わる部署にしました。とにかく現場の近くでものづくりを学びたい、という気持ちがあったからです。

全体の集合研修を終え、工場実習前の研修最終日、待ちに待った配属発表がありました。大ホールに同期があつめられ、1人ずつ名前と配属が読みあげられていきます。

「髙木一史 人事部」

自分の耳を疑いました。毎年10人程度が新卒から人事部に配属されていることは耳にしていましたが、まったく志望していなかった自分が配属されるとは思ってもみませんでした。

就職活動でお世話になっていた先輩たちからは、「腐らずに仕事を続けていればかならず異動の機会はある。まずは目の前の仕事をがんばろう」と励まされました。

配属初日、落ち込むぼくの心に刺さった部長の一言

たしかに、ぼくの会社人生は始まったばかりでした。同じく人事部になった同期も気が合いそうでしたし、「スタートとしては上々だ」何度もそう自分に言い聞かせました。

配属初日、当時の人事部長からこんな言葉をもらいました。

「採用、配置・異動、賃金、評価、時間管理、研修教育……。こうした人事労務管理のしくみはすべて、トヨタという会社が理想を実現し、また社員がいきいきと幸せに働いていくうえで必要不可欠なものです。『花よりも花を咲かせる土になれ』この言葉を胸に一生懸命、会社の理想実現と社員の幸せのために頑張ってください」

社員が元気に、幸せに働くサポートをする。

とてもすてきな仕事だと思いました。まだ調達部で働くことをあきらめきれない自分もいましたが、人の幸せをサポートできるというのはとても誇らしい仕事だと思いました。