「重要な情報がおりてこない」雰囲気で済まない問題点

また、単純に雰囲気としてやりにくいことはもちろん、それにくわえて重要な情報を知る機会が失われている、というのが大きな要素としてあるように思いました。

役職ごとに知ることができる情報が厳しく統制されている、それを知るには上の人の承認が必要、話が順番に降りてくるのを待たなければならない。重要な会議体での議事録や制度の背景が載っている決裁書を見ることができず、手戻りが発生することもありました。

例を挙げればキリがありませんが、このような雰囲気のなかで、ぼくたちの手元にある情報はいつもかぎられていました。そして、欲しい情報を得るために最も効果的な方法は、部の飲み会や社内のイベントに出る、あるいは残業して、長く会社に残っている先輩たちと直接話すことでした。

それでは、時短で帰る人や飲み会が苦手な人、あるいはオフィスに出社しない人たちとの間に情報格差が生まれることになります。結果、重要な情報を知っている一部の人だけで物事が進んでいく、ということが起きます。

社内飲み会に積極的に参加することにした理由

時間的にもフルコミットで働き、出社するのが前提のぼくでさえ、その情報を先に知っていたらこんな資料つくらなかったのに、ということがあったくらいなので、そうではない人からすれば、さらに疎外感は強かったかもしれません。

働く時間や場所の選択肢を増やす、さらにはコミュニケーションの仕方を変えることで、もっともっと社員が幸せに働ける環境をつくりたい。

そうした思いは日に日に増していくばかりでした。しかし、それができるようになるには組織のなかで信頼され、またその変革を実行できるだけのスキルが必要になってきます。

ぼくはどんどん目の前の仕事に没頭するようになりました。情報を得るために社内の飲み会やイベントにはできるだけ参加し、たまの休みも労働法やビジネススキルの勉強に費やしました。

「そうじゃない!」心で叫びながら、駅伝の練習をした

そんな矢先のことでした。

ある尊敬する先輩がメンタル不調で休職されました。ものすごく仕事ができる、精神的にもタフだと思っていた先輩でした。

ふと、ぼくは自分の働き方を振り返りました。

ぼくはいま、元気に働けているだろうか、と。

かなり根を詰めていたせいか、「顔色が悪い」と言われることも増えていました。飲みすぎで睡眠時間も減ったからか、食欲も以前より減退していました。少し疲れていることを先輩たちに伝えると、「社内駅伝大会もあるし、一緒に明日から会社の周りを走るか!」と言われました(「そうじゃないんです! 先輩!」と心のなかで叫びながら、結局走りました)。

しんどいなと思ったとき、気軽に自分の精神状態について相談できたり、心身のアラートが出ていないかセルフチェックできたりすればいいのですが、会社の「健康」施策といえば、つまづいて転んだ事例の展開など、工場勤務を前提としたものや、残業制限といった一律の規制がほとんどです(もちろん、それも大事なことは承知しています)。

役割や個性によって健康に必要な情報・支援はさまざまなはずなのに、どうして一律の規制ばかりなのだろう。ふと、そんな疑問も頭をよぎりました。