感染者が急増する局面で優先すべきこと
また感染者が増えてくると、無症状者にも片っ端から大規模検査を行って、感染者を全数捕捉すべきだとの意見を目にすることもよくあるが、ここまで急速に感染者が増え、市中感染が爆発してきた場合には、検査体制やキットの供給が間に合わなくなる可能性がある。
感染者数急増に驚いているのは私も同じだが、ここは冷静に、いかに重症者や重症化しそうな人を早期に洗い出すかを最優先に考えるべきとの観点から、無症状者に検査のリソースや労力を割くことはやめて、まず有症状者、なかでも高齢者や基礎疾患のある人などに遺漏なく、そして遅滞なく検査を行うことを第一とすべきであろう。
ご存じのとおり、検査には抗原検査とPCR検査がある。両者には一長一短あり、ザックリ言うと、抗原検査は偽陰性という見逃しがあるものの診察室でリアルタイムで結果が出る。一方で、PCRは抗原検査より見逃しは低いものの、結果が出るまで時間を要する。今回のような感染者急増局面では、両者をいかに賢く無駄なく使い分けるかが重要だ。
自己検査で陽性でも「医療機関で再検査」というムダ
抗原検査キットは街の薬局でも入手可能だ。厚生労働省、消費者庁は「体外診断用医薬品」との表示があるものを使用するよう呼びかけており、陽性と出た場合は速やかに医療機関を受診するよう求めている。それもあってか、最近受診に来る有症状の方の中には、これらによる自己検査で「陽性と出たため」という方も少なくない。
しかし7月12日現在、この自己検査で陽性となった人でも、医療機関を受診した上で再度検査し、陽性結果を確認しないと陽性者として確定診断されないこととなっている。これは非常に無駄な話だ。現在すでに診療所にて使用している検査キットの流通も滞り始めている状況だ。
第6波の検査逼迫時には一時的に「自己検査陽性者はその結果のみをもって確定診断としてよい」との措置が取られたが、医療体制の逼迫と検査キットの枯渇が懸念される今こそ同様の臨時措置が急務であろう。
さらにこの感染急拡大局面で懸念される大きな問題は、「誤診リスク」だ。コロナ禍以降、発熱者を診療しない診療所が増えたことは先述したが、門前払いしないまでも、直接患者さんの身体診察を行わず、「検査のみ」「投薬のみ」とする診療所が出現した。発熱者を断らないものの、電話やネットを使い、もしくは診療所内であってもインターホン越しという、対面なしで診察をするところである。