今回の変異株はほとんどが「軽症」だが…
7月に入って、新型コロナウイルスの新規感染者数が急激に増えてきた。私が主として診療しているクリニックの発熱外来でも、先月末の落ち着いた雰囲気は一転。朝から問い合わせや受診依頼の電話が鳴り続け、予約枠はあっという間に埋まってしまう事態となっている。まさに「第7波」到来だ。
思い起こせば昨年の暑い時期も連日、発熱外来は大忙しであった。当時は感染者数の急増に加えて肺炎に移行する患者さんも少なくなかったことから、実際の診療現場では感染者の状態変化にはとくに注意を要した。一方、今回はこれまでのところは、幸いほとんどの患者さんがいわゆる「軽症」だ。
とくにワクチンを3回接種した人などは、38度を超える発熱をきたしても延々と長引くことはなく、薬を服用せずとも早ければ1日で解熱してしまう。今後感染者の増加にともなって、肺炎を併発する重症者も増えてくる可能性を考えれば軽々に判断してはならないが、新型コロナウイルスに対する印象は昨夏とはかなり異なる。
「インフルエンザと同じ扱い」は危険すぎる
一方で、真っ先に有症状者に対応することとなる診療所は早くも逼迫し始めている。その理由のひとつとして言えるのは、発熱者など新型コロナウイルス感染症が疑われる患者さんを診療する診療所の数がけっして十分ではないことだ。
この問題については以前から述べているとおり、仕方ない部分もある。診療所の構造上、待合室や動線が分離できない施設においては感染疑いの人を診療することが危険だからだ。とくに今回急速に置き換わりつつある「BA.5」は、以前の変異株に比較して感染力が強く、一部の専門家からは重症化リスクが高い可能性も指摘されていることから、現時点で季節性インフルエンザと同等の「5類扱い」にして、一般の診療所すべてで診療するようにすべきだとの意見は危険に過ぎると言わざるを得ない。
ただ構造上、発熱者外来を設置できるにもかかわらず発熱者の受け入れを行っていない診療所や、実際に発熱者を診療しているにもかかわらず、その事実を公表せず、対象者をかかりつけ患者に限定するなど、地域医療の担い手としての役割を十分に果たしているとは言えない診療所が存在しているという残念な話も聞こえてくる。今回のような急激な感染者増に対応するためには、これらの診療所にも一肌脱いでいただく必要もあるだろう。