配偶者控除撤廃は女性の就業を促すのか

また、「配偶者控除をなくせば女性の就業が進む」というのも少し違うと思います。「女性の職場進出が進む」という言葉は、非正規雇用のパートタイムではなく、正社員としてフルタイムで働く女性が増えることを指すほうが多いでしょう。そのためには、非正規社員の女性を正社員にしていく必要がありますが、そこにはそれこそ高い壁があります。

本人が「配偶者控除がなくなったからいっそのこと正社員として働こう」と思ったとしても、現状ではすぐ正社員になれるわけではありません。そこは雇い主側の判断になります。今の日本では、非正規社員と正社員、パートタイムとフルタイムとの間に高い壁があり、他国と比べて相互の流動性は極めて小さい。これは配偶者控除をなくしたからといって壊れるものではありません。

一方、配偶者控除を見直すべき理由として「最近はフルタイムで働く女性が増えて形骸化しているから不要」という意見もあります。ですが、今回の男女共同参画白書を見るとそれは事実ではありません。1985年と2021年との比較では、妻がパートタイムで働いている世帯は増えたものの、フルタイムで働いている世帯はほとんど増えていないのです(図表2)。

出所=「男女共同参画白書」令和4年版

「週3勤務→週4勤務」が増えても女性の進出が進んだことにならない

確かに「共働き家庭」は増加していますが、増えたのは「パートで働く妻」です。そうした人たちの収入は正社員に比べて圧倒的に低く、だからこそ非正規雇用で稼ぐ範囲内で配偶者控除を活用しようと就業調整をする必要が出てくるのです。

配偶者控除がなくなったら、就業調整をやめてパートで週3日働いていたところを4日にする有配偶女性は増えるかもしれません。でも、それでは女性の職場進出が進んだとは言えませんし、時給が上がって自立した暮らしができるようになるわけでもない。男女共同参画行政が進めようとする女性の経済的自立や女性活躍とはほど遠い状況と言えます。

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