学校に行くメリットも大きい

一方、私は学校に行くメリットも大きいと思っています。というのは学校というのは、いろいろな人と出会える大きなチャンスの場だからです。行事やイベントでは、互いにもっと深く知ることができますし、それは自分自身を成長させてくれる機会となります。大人になってから、そういった仕組みに入ろうとすると、大金がかかりますから、それを自然なかたちで与えてもらえるのは、大きなメリットだと思います。

また学校という社会的ルールの中におかれることで、いろいろな発見があります。たとえば、みんなで掃除をしましょうというだけで、俺って雑巾の絞り方も知らなかったんだ、あいつはガラスをふくのがうまいな、といろいろな学びがある。

そういうルールがないと、意外性のある発見や学びには、なかなかつながりません。自分が、まともに掃除ができないことすら気づかず、20歳になってしまうこともあるのです。自分のできないことを知るという意味でも、学校というのは意味のある場所だと思います。

親が子に「本気で謝る」とき

最近、受けた相談の中には、ただ子どもが学校に行かないだけでなく、親を困らせるために子どもが行かないという話もありました。そのお子さんは小学校高学年で、親子の対話すら難しいと親御さんは苦しんでいらっしゃいました。

撮影=水野真澄

おそらく、その子自身、尖っている自分に気づいていて、それを人に認めさせたいし、かといって理解もされたくないし、という複雑性の中にいるのでしょう。その中で、親は学校に行けと言っている。じゃあ行かないって言ったら、どうなるんだと親を試していますし、親の愛情の量も確認しようとしている。

そうなったときに、親にできることは子どもに「本気で謝る」ことです。「私はもしかしたら長い間、あなたの本当の気持ちに耳を傾けられていなかったかもしれない。ごめんなさい。今までそんなつもりはなかったけれど、そういうふうに伝わっていたことは、自分でも反省しているから許してほしい。これからは本当に耳を傾けていきたい」と伝えること。それが子どもに伝われば、子どもは変わっていくでしょう。