市場の違いに素早く対応したメルカリ

ここまで日本の大手企業を中心に説明してきたが、ここで、日本のスタートアップ企業の一つであるメルカリのアメリカ事業(メルカリUS)について見てみたい。

2013年に創業したメルカリは、翌2014年にはアメリカ市場に進出してメルカリUSを設立。2021年6月決算においてメルカリUSは初めて黒字化した。その経緯を伝える報告書を見ると、自社の日本でのビジネスモデルが通用しないと分かったアメリカ市場で成功するために、結局は事業モデル自体を書き換えている。

これが、日本企業の海外展開に関連した課題だ。これは海外市場に限られた話ではないが、自社の事業を成長させるためのモデルを考え、市場に適応(変化)させることは、全ての企業にとって生存競争での生き残りに関わる能力だ。

メルカリUSの黒字化に向けた対応スピードの速さは、さすがスタートアップ企業だ。日系大手流通企業であれば、資源配分など含め、恐らくここまで速い対応はできなかったのではないだろうか。

異なる市場で事業を推進するために必要なモノ

市場が異なる=異なるビジネスモデルが必要だとすると、それを推進していくために必要なものは何だろうか?

それには資金も必要だが、それよりもむしろタレント(人財)のほうが重要となる。そして、市場が海外ということを考えると、そこにうまく対応していくためには、日本人の人財だけではおかしい、という結論になる。「日本人」という国籍的な区別だけではなく、リスクへの許容度や異なる思考や価値観を持った人も内包していく必要があるということになる。

そう考えたとき、自社でつくり上げた免疫に守られ、旧態依然とした経営を続ける大手企業が、その組織体をそのまま継続していくのであれば、遅かれ早かれ競争力が失われていくことは必然であり、すでに起こっている現実である。

日本を単なる一地域の市場として経営するべき

ここまでの内容を要約してみよう。

・多様性を受け入れられない企業体は、硬直化して徐々に競争力が失われる
・海外展開とは、事業モデルをその市場に適応させ続けるということ

日本以外の市場が伸びていて、今後もその傾向が続くような事業をしている企業は、日本を自社のビジネスの中心と考えるのではなく、単なる一地域の市場として扱うべきだ。