上海の封鎖が解かれても状況は厳しい

他方で、中国の企業は世界的な資源価格の高騰や人民元安を背景とするコストプッシュ圧力にも直面している。特に、経営体力が限られる中小企業を取り巻く環境はかなり厳しい。ゼロコロナ政策による需要減少、不動産バブル崩壊による経済全体での債務リスク上昇に電力供給不安が重なることによって、事業運営の困難さは追加的に増す。

生き残りをかけて、これまで以上に雇用を削減しなければならなくなる事業者は増えるだろう。中国の雇用・所得環境は追加的に悪化し、個人消費を中心に内需は減少する恐れが高まっている。6月から上海のロックダウンが解除され徐々に経済が動きはじめた中での電力供給不安の台頭は、中国経済にとって軽視できない負の要因だ。

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半導体製造に欠かせない黄リンもピンチ

中国の電力供給不安は、世界的な供給網に制約が発生する懸念がある。その一つとして、世界的な半導体不足に与える影響だ。昨年9月、電力不足を解消するために共産党政権はリン工場に生産を減らすよう命じた。リン鉱石は電炉で融解されて黄リンが製造される。黄リンを用いて半導体製造のエッチング工程で表面処理に用いられる高純度のリン酸などが生産される。リンは肥料の原料にもなる。

中国は世界のリン鉱石生産の53%を占める(2017年)が、その多くを国内で消費する。昨年、減産を指示された中国の化学メーカーはわが国が調達先としてきたベトナム産の黄リンを買いに回った。その結果、世界全体で黄リンの需給が急速に引き締まり価格が急騰したのである。4月以降の中国の黄リン価格の推移を確認すると、同月後半あたりから価格は上昇しはじめた。ゼロコロナ政策による物流停滞などの懸念が主な要因だろう。