ベリングキャットは過去にもOSINTを活用し、ロシア野党指導者の暗殺未遂疑惑など数々の事件を扱い、諜報機関を上回る成果を挙げている。ワシントン・エグザミナー誌は、すでに起こった事件の分析のみならず、ネット上に溢れる民意の変化を読み解くことで軍事的動向の予測に反映できるのではないかと提言している。

不確実な情報が台湾有事のリスクを高める

中国・台湾間の衝突が懸念されるいま、中国軍の軍事力と戦意の正確な把握は重要な課題だ。仮に中国側が台湾への武力侵攻に及んだならば、日本を含む周辺諸国への影響は避けられない。こうした地域には台湾侵攻に介入するであろう米軍の基地が存在することから、中国による直接攻撃の対象となるおそれがある。

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ウクライナ侵攻におけるロシアの例を鑑みるならば、世界第3位の軍隊とされる中国人民解放軍が、ふたを開けてみれば想定よりも粗末な戦いを演じる可能性はあるだろう。戦況予測には戦力と戦意の両面を考慮する必要があるが、特に戦意の高さについては定量的な評価が困難だ。

ロシア軍がウクライナ人への攻撃を躊躇ためらう理由の一つとして、おなじスラブ系民族であることが指摘されている。同様の原理が中台間にも適用されるのであれば、台湾侵攻に対し中国兵が抵抗感をおぼえてもおかしくはない。

他方、兵器開発という観点では、中国の脅威を過小評価すべきでないことも事実だ。極超音速ミサイルの開発はアメリカの情報網をもってしても把握できず、完全に出し抜かれる格好となった。ミサイルの試験発射は昨夏の出来事だが、1年近くが経過したいま、さらなる先進兵器の開発が中国国内において、世界の預かり知らぬところで進められていても不思議でない。

いずれにせよアメリカでは議員やアナリストたちが、中国軍の能力を再評価せよとの声を日増しに高めている。それは米情報機関に対する不信感のあらわれだろう。アフガン、ウクライナと予測を大きく外してきた情報網だが、中国情勢を正確に読み解くことができるのか、分析の精度に厳しい目が向けられている。

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