期待が裏切られたせいで
批判派の急先鋒は、元ロシア連邦保安局(FSB)将校で、ウクライナ東部ドンバス地方で親ロシア派武装勢力を率いたイーゴリ・ギルキンだ。
侵攻当初にドネツク出身の戦闘員が強制的に動員され、訓練も装備も不十分なまま戦線に送られ多数の死者が出て、大打撃につながったとの報告を、彼は喧伝している。
批判噴出の引き金になったとみられるのが、5月前半にロシア軍が壊滅的敗北を喫したドネツ川の戦いだ。一連の交戦でのロシア側の死者数は推定500人近くに上り、80以上の装備が破壊された。
この戦い以降、テレグラムでは戦争の進行速度への疑問や両軍の軍事作戦の比較、ロシア側のプロパガンダを疑問視する声が上がるようになった。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は先日、ウクライナでの軍事作戦の遅れを初めて認めた。国民の期待値コントロールを目的とする発言だと、アナリストらは解釈している。
ロシア政権関係者や国営メディアが約束した即時の勝利がさらに遠のいている、という国民の幻滅に真のリスクが潜むと、米カーネギー国際平和財団のタチアナ・スタノワヤ非常勤研究員は指摘する。
「ある種の政治的危機が起きていると言える。プーチンは政治的圧力を受けている。ウクライナでの戦争を勝利で終わらせなければならない、と」