アメリカは歯1本につき20~30万円の治療費

中には、「歯医者」と聞いただけで、ドリルで歯を削るキュイーンという音を思い出して、「嫌だなぁ、怖いから歯医者にだけは行きたくない」と思う人もいるかもしれません。

ですが近年、「治療」よりも、「予防」に力を入れる歯科医も増えています。例えば、歯周病患者の場合、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、違和感に気づいたときには歯茎や歯根が弱りきっていて抜歯するしかないということが多々あります。

そうなる前に予防することが、私たちのQOL(生活の質)を高め、健康寿命を延ばして、脳の老化を防ぐことにつながります。

意識の高い歯科医院では、早いうちからこのことに気づいていて、治療だけでなく、メンテナンス(口腔ケア)を非常に重要視しています。

時代は「治療歯科」から「予防歯科」へと、移り変わろうとしているのです。

例えば、国民皆保険制度が存在しないアメリカでは、無保険の人がむし歯になって歯科医にかかると、1本につき20~30万円程度の治療費がかかると言われています。

ここまで高額だと、一般の人々はなかなか治療することができません。

そのため、予防歯科のシステムが非常に発達しています。その一環で、歯科衛生士さんは独立開業し、メンテナンスを中心としたケアを提供することができます(日本では、歯科医がいなければ開業できないシステムです)。

このような予防システムを活用しているため、アメリカ人が歯周病やむし歯で歯を失う確率はとても低くなっています。

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歯科を定期受診すると、生涯医療費が安くなる

定期的な歯科受診で、生涯医療費が大幅に下がるという報告もあります。

トヨタ関連部品健康保険組合と豊田加茂歯科医師会が共同で、組合員の医療費と歯科受診歴のデータを分析。

その結果、定期的に歯科受診をしてプラーク除去をしている人は、28歳までは総医療費が平均よりやや高かったものの、49歳を過ぎると平均を下回るようになることがわかりました。また、この金額差は、年齢を重ねるごとに大きくなることもわかっています。

定期検診を受けている人の医療費が安くなるのは、定期的に歯科医に歯をケアしてもらうことで、糖尿病などの生活習慣病をはじめとする全身疾患リスクが抑えられているためだと考えられています。

歯科の定期受診は、あなたの健康寿命や脳の寿命を延ばしてくれるだけでなく、家計も助けてくれるのです。

例えば、北欧では、最低年2回、歯科でプラーク除去をしない限り保険適用ができない国もあるそうです。それほどまでに、歯と全身の健康状態の関連が認知されて、プロによるチェックとケアの有効性が重要視されているということでしょう。

神奈川歯科大学の山本龍生教授らのグループが、65歳以上の日本人4425人を4年間追跡調査した研究によると、かかりつけの歯科医院のない人は、かかりつけの歯科医院で定期検診を受けている人と比べて、平均1.44倍認知症になりやすい傾向が見られたそうです。

最先端の情報に誰よりも詳しく、実行力にも秀でているホリエモンこと堀江貴文さんは、こうしたことをよく知っていて、どこへ行くにも歯ブラシとフロスを持ち歩き、定期的に歯科でプラークを取ってもらっているそうです。