米メディアが報じた「台湾有事」の悲劇的シナリオ

中国による台湾侵攻の懸念が高まるなか、悲観的なシナリオがアメリカで報じられている。中国が侵攻に踏み切った場合、日米およびその他のアメリカの同盟国が制止に動いたとしても、制止は不可能だという分析だ。さらに、中国は開戦直後、真っ先に在日米軍基地などを叩くとする予測も出ている。米CNNが、米シンクタンクおよび複数のアナリストによる見解をもとに報じた。

写真=中国通信/時事通信フォト
中国共産党創立100周年祝賀大会で重要演説を行った習近平国家主席=2021年7月1日、天安門城楼(新華社=中国通信)

台湾侵攻の現実味は、直近でも改めて浮き彫りになっている。アメリカのバイデン大統領は5月23日の訪日中、台湾有事の際にはアメリカによる軍事介入を実行する意思があると明言した。米ワシントン・ポスト紙は、「(バイデン氏が)台湾へのあらゆる攻撃のおそれに対し、鋭い警告を発した」と報じている。

バイデン氏によるこうした警告は就任以来、今回で3度目となる。米中間の緊張の高まりを懸念するホワイトハウスは今回も含め、都度打ち消しの声明を発表してきた。CNNはこのような経緯を説明したうえで、「しかしながら、必然的にこの疑問が浮かぶ。すなわち、中国が台湾の奪取を試みた場合、アメリカとその同盟国たちは制止する能力をもつのだろうか?」と述べ、実際に侵攻が起きた際に阻止は可能なのかと問題提起している。

同記事はアナリストによる分析をもとに、次のように続けた。「そして、驚くべき答えがこちらだ。おそらく、(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」

米軍を苦しめる「距離の呪縛」

専門家らが懸念しているのは、現実的にアメリカが台湾へどれだけの武力を動員できるかという点だ。CNNは、「中国が保有する兵士・ミサイル・船舶の数は、台湾、あるいはアメリカや日本といった支援国となり得る国が(戦場に)持ち込むことができるこれらの数を上回る」と指摘する。